大うつ病性障害患者は年々増加しているが、疾患原因や根本的な治療法の確立には未だ至っていない。近年大うつ病の新たな治療戦略として腸内細菌叢へのアプローチが着目されている。脳と腸のコミュニケーション経路として自律神経系、腸神経系、神経内分泌系、そして免疫系の関与があげられる。腸内細菌叢-腸-脳軸は、中枢神経系の受容体、GABA、短鎖脂肪酸であるβ-ヒドロキシ酪酸などの代謝産物によるエピジェネティックなメカニズムを介して直接、双方向のシグナル伝達に関与している。 我々の先行研究において大うつ病患者の腸内細菌叢構成は健常者とは異なり、ビフィズス菌の有意な低下及び乳酸桿菌の低下傾向を認めた。この結果より視床下部-下垂体-副腎・軸(HPA 軸)の変調や腸内細菌代謝産物による短鎖脂肪酸の分泌低下により腸管上皮細胞のバリア機能低下、Leaky gut syndrome(腸管壁浸漏症候群)及び炎症免疫系の異常が想定される。本研究では大うつ病患者は腸内細菌叢の構成が腸管バリア機能低下、炎症-免疫系の異常に関与するという仮説を検証する。 健常者50名と大うつ病患者19名についてdata収集が終了した。腸内細菌について健常群と大うつ病群の比較をChao1、Shannon index、主成分分析などを行っている。また、血液生化学検査Dataとの関連性、Leaky gutについても解析を進めている。健常群と大うつ病群では、腸内細菌構成に相違があり、血液検査dataとの関連についても報告する。
|