研究課題
【研究目的】認知症の有病者数は2025年には700万人になると推計されており、認知記憶障害及び周辺症状の徘徊[記憶再生(想起)障害が主要因]への治療と予防法の確立は喫緊の課題である。先行研究にて、■ケルセチンを摂取したアルツハイマー病(AD)モデルマウスとケルセチン高含有玉葱粉末を摂取したAD患者は記憶再生障害が改善すること、■ケルセチンは転写因子ATF4の発現を抑制することを明らかにした。そこで、ケルセチンを長期間摂取したADモデルマウス脳のConnectivity Map解析を行い、記憶再生障害の改善が期待できる食品成分を5種類選択した。本研究では、これら成分のリン酸化eIF2α―ATF4シグナルへの作用と記憶再生障害に対する効果を明らかにし、同定した成分とケルセチンとの効果的な組合せの解明を到達目標とする。【研究成果】平成29年度の成果として、フラボン類に属するルテオリンが培養細胞において、統合的ストレス応答を抑制しATF4発現を抑制すること、また、アミロイドβ産生を抑制することを明らかにした。この成果に基づき、平成30年度は、アルツハイマー病モデルマウスを用い、ルテオリンの脳内における統合的ストレス応答シグナルへの作用と認知機能への作用を検討した。アルツハイマー病モデルマウス(APP23)の腹腔内にルテオリンを2~3ヶ月連日注射し、脳内における(1)リン酸化eIF2αの発現抑制と(2)N末及びC末断片のプレセニリン-1発現抑制をウエスタンブロットにて確認した。さらに、行動解析にて、うつ状態への影響が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
アルツハイマー病モデルマウス(APP23)の脳において、統合的ストレス応答シグナルに対するルテオリンの効果を確認した。
アルツハイマー病モデルマウスを用い、認知機能に対するルテオリンの効果を様々な行動解析から検討する。
研究は計画通り遂行した。昨年度の使用額が生じていたため、様々な動物実験に有効に使用できたが、極小額のみ次年度使用額が生じた。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Brain Research
巻: 1688 ページ: 81-90
10.1016/j.brainres.2018.03.025
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 9081
10.1038/s41598-018-27105-w