2017年度に、日本人大学生1年生1200人を対象に次の調査を実施した。 ①自記式食事歴法質問票(DHQ)による一日の栄養素摂取量推計 ②代謝状態に関する血液検査 (肝機能(GOT、GPT)、尿酸、脂質(中性脂肪、HDL・LDL コレステロール)糖代謝(血糖、HbA1c))、血圧、身長・体重測定からbody mas index(BMI)を算出 ③心の健康度(鬱と不安の指標であるK10テストと、ストレス耐性の指標であるSOCテストの回答画面をWeb回答)④基本背景情報(年齢、性別、学年、学部)と 生活背景(睡眠、運動、食習慣、社会活動、居住環境)の調査 2018年度は、無作為に各600人ずつ、定期的に食育を提供する「食育群」と感染症に関する(食育以外の)健康教育を提供する「対象群」に分け、ポピュレーションアプローチを約1年間にわたり実施した。 さらに、2019年度は、上記の①~④を再検し、以上の調査結果をデータベース化した。このデータベースを利用して、大学生の一日の栄養素摂取量や代謝状態と、心の健康度、基本的な生活背景情報との関係をクロスセクショナルに分析するとともに、1年後の変化をプロスペクティブに比較検討した。 その結果、1年間の栄養素摂取量の変化量を各栄養素別に、「食育群」と「対象群」で比較すると食育群で有意に小さいことが示された。特に、脂質摂取量の増加、食物繊維摂取量の低下、カルシウム摂取量の低下といった望ましくない栄養素摂取変化が「食育群」で抑えられていた。大学入学後、食生活が大きく変わる時期に、食育を提供することは栄養摂取バランスの悪化を防ぐことに有用であることが示唆された。
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