研究課題/領域番号 |
17K00918
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
武藤 弘樹 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60443040)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 摂食障害 / グリア細胞 / アストロサイト / AgRP神経細胞 / POMC神経細胞 |
研究実績の概要 |
摂食障害は近年増え続けている大きな健康問題である。過食による肥満は糖尿病や高脂血症などのメタボリックシンドロームの原因となり、拒食症は深刻な栄養不足を招き腎機能障害や心機能の低下などを引き起こす。その他にも摂食障害による体重の増減は健康面に大きな影響を及ぼし、またうつ病などの精神疾患を併発することも報告されている。この様な原因として近年摂食行動を制御する視床下部を中心とする中枢神経系の異常が注目されている。視床下部弓状核に存在するNeuropeptide YおよびAgrouti-related peptideを生産する神経細胞とpro-opiomelanocortinを生産する神経細胞の活動状態に依存して摂食行動は制御されている。これら神経細胞の周囲に存在するアストロサイトなどのグリア細胞も細胞外のイオンや神経伝達物質の濃度を調節することにより摂食行動に関わっていることが知られている。 本研究では、摂食行動を調節する新たな因子を神経細胞とグリア細胞より見つけ出し、摂食障害の新たな治療法や新薬開発につなげることを目的としている。そこで、拒食症のモデルマウスとして、免疫システムに重要なToll like receptorの発現・機能制御を担うタンパク質CNPY3を欠失させたマウスを使用した。CNPY3欠損マウスは明らかな発育不全を示し、生後4週までに死亡する。生後3週のCNPY3欠損マウスの体重は野生型に比べ半分しかなく、さらに直腸温の低下も見られ、視床下部の機能異常が考えられる。また、行動解析により精神疾患の併発も示唆された。今後、このモデルマウスを用い摂食行動に関わる神経細胞またはグリア細胞の機能異常を解析し、新たな治療法や新薬の開発につなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、摂食行動を調節する新たな因子を神経細胞とグリア細胞より見つけ出し、摂食障害の新たな治療法や新薬開発につなげることを目的としている。そこで、拒食症のモデルマウスとして、免疫システムに重要なToll like receptorの発現・機能制御を担うタンパク質CNPY3を欠失させたマウスを使用した。CNPY3欠損マウスは明らかな発育不全を示し、生後4週までに死亡する。生後3週のCNPY3欠損マウスの体重は野生型に比べ半分しかなく、さらに直腸温が3℃程度低下し、視床下部の機能異常が考えられる。また、行動解析によりCNPY3欠損マウスは野生マウスより不安様行動の減少が見られ情動性異常と、顕著なうつ症状が見られた。 このCNPY3欠損マウスは、摂食障害と精神疾患を併発する良いモデルマウスであることが示唆され、今後詳細な機能解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CNPY3欠損マウスが摂食障害と精神疾患を併発するモデルマウスであることが示唆されたので、視床下部弓状核に存在する神経細胞やグリア細胞の機能解析を行う。 現在のところ、CNPY3が脳に発現していることは報告されているが、明確な局在や脳機能発現との関わりについては知られていない。まず免疫染色法やCNPY3タンパク質にタグ標識を付加することにより、脳内でCNPY3を発現する細胞種の特定を行う。次に特定された細胞においてCNPY3欠損によりどのような機能異常が生じているのか電気生理学やカルシウムイメージングを用い詳しく調べる。また、CNPY3を発現する細胞をGFPなどの蛍光色素で標識することにより、CNPY3が欠損したことにより他のタンパク質のリン酸化の変動を網羅的に分子レベルで解析する。これら機能解析と網羅的解析により得られたデータをもとに新たな治療法や新薬の開発につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
摂食障害のモデルマウスを購入または作製を考えていたが、共同研究によりCNPY3欠損マウスを譲渡して頂いたため、次年度へ繰り越しすることになった。 今後、CNPY3タンパク質にタグ標識を行ったり、電気生理学やカルシウムイメージングを行うための試薬または物品購入にあてる。
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