研究課題/領域番号 |
17K00920
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
吉本 光佐 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (20418784)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 減塩 / 高血圧 / 食塩感受性 / ラット / 交感神経活動 |
研究実績の概要 |
日本を含め世界各国で高血圧の治療において食塩制限が重要であると考えられている。食塩摂取の多い日本では、男性8g/日未満、女性7g/日未満に目標設定されているが、日本人の食塩摂取量は平均約10g/日(平成28年国民健康・栄養調査結果)と以前目標値よりも高く、そのためさらに減塩が進められる。しかし、一方で、食塩摂取と心血管イベントのリスクや死亡率は、少なすぎても危険であるとの調査報告もある。そこで、本実験では、減塩が生理的に循環調節にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。 【方法】Dahl食塩感受性高血圧ラット(DS)と食塩耐性ラット(DR)、およびウィスター系ラット(WS)に、腎及び腰部交感神経活動測定のための電極、動脈圧測定のためテレメトリーを手術により慢性留置し、その後約1週間の回復を待ち測定を開始した。 2年目である本年度は、測定開始9日前に8%食塩食を負荷し(食塩食負荷期間14日間)、測定開始して5日目に標準食に戻し、その後23日間測定を継続した。実験期間中は1日1回明期に行動観察を行った。測定中に代謝ケージで飼育しし尿量を測定した。 【結果】DS群の食塩不可終了後、動脈圧は急激に減少し、その値を維持した。一方で、腎交感神経活動は、増加し、腰部交感神経活動はほとんど変化しなかった。WI群では、動脈圧は高血圧とまではいかなものの、若干減少しその後も低い値を維持し、心拍数はほとんど変化しなかった。腎交感神経活動は、増加する傾向にあったが腰部交感神経活動は、ほとんど変化しなかった。また、減塩によりいずれの群においても尿量が減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究と同じ週齢で食塩負荷を行ったところ、実験測定中にラットの突然死が増加した。手術時の負荷が大きすぎたのか等で、術後のケアーを再検討したが、突然死が続いた。様々な検討からラットの購入元である日本SLCのダール食塩感受性ラットのデータ集を確認したところ、11週齢以降、生存率が急激に低下することがわかった。そのため、これまでの実験との週齢を合わせることを諦め、週齢を早めたところ死亡することはほとんど無くなった。このことに気がつくまでのロスが、進捗状況の遅れにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に引き続き測定を行う。さらに、①3群のそれぞれの動脈圧低下の幅が、交感神経活動の増加の幅に差が出るかどうか。②代謝ケージを用いることで、減塩前後の尿量、尿中ナトリウム・カリウム濃度、尿浸透圧を測定する。③交感神経活動の増加が動脈圧や心拍数、心電図にどのように影響するかを周波数解析等を用いて検討する。 以上の検討から、過度な減塩による交感神経活動の増加が生体ににどのように影響を及ぼすか、交感神経活動の役割について交感神経活動や動脈圧や心電図の実測データおよび、尿量、尿中ナトリウム・カリウム濃度、浸透圧等の実測データを用いて様々な角度から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大きく差額が生じた理由として、初年度に代謝ケージを購入する予定であったが、使われていない代謝ケージを借りることに成功したので、その費用が浮いたことが挙げられる。 また、ダール食塩感受性ラットの実験中の死亡が続いた時に、病態モデルラットでなくウィスターラットの使用を増やしたことも、1匹あたりの金額差が大きいため、差額につながった。 次年度の使用計画として、単価が高額である病態モデルラット(ダール食塩感受性ラットとダール食塩抵抗性ラット)の使用を含めた各種消耗品、論文投稿費用等を計画している。
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