日本を含め世界各国で高血圧の治療において食塩制限が重要であると考えられている。食塩摂取の多い日本では、男性8g/日未満、女性7g/日未満に目標設定されているが、日本人の食塩摂取量は平均約10g/日(平成28年国民健康・栄養調査結果)といまだに目標値よりも高く、そのためさらに減塩が進められる。しかし、一方で、食塩摂取と心血管イベントのリスクや死亡率は、少なすぎても危険であるとの調査報告もある。そこで、本実験では、減塩が生理的に循環調節にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。 【方法】実験には、ダール食塩感受性ラット(DS群)とダール食塩抵抗群(DR群)を使用した。それぞれの群のラットに腎及び腰部交感神経活動測定用電極、動脈圧測定用テレメーターの慢性留置手術を行い、術後7日間の術後回復を経て実験を開始した。実験は、3日間のコントロール期、14日間の食負荷期(8%食塩食)、7日間の標準食に戻した減塩期の合計24日間行った。 【結果】動脈圧はDS群において食塩負荷開始後3日間急激に上昇し、その後も緩やかに上昇を続けた。動脈圧上昇には、日内差の増加と行動観察時の行動別基礎レベルの上昇がみられた。DR群において動脈圧は食塩負荷開始3日間上昇し、その後は一定値を保った。さらに減塩期にDS群の腎交感神経活動は有意に増加した。 【考察】食塩負荷時のDS性群の動脈圧上昇時において、腎及び腰部交感神経活動と心拍数は動脈圧と似た変化をしなかった。従って、食塩負荷時のDS性群の高血圧発症初期において腎及び腰部交感神経活動は血圧上昇に主要な役割を果たしていないと考えられる。また減塩期のDS群の腎交感神経活動が有意に増加しており、DS群は食塩摂取量が低下した際に腎交感神経活動が過剰に反応するという特徴が明らかになった。
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