研究課題
ある種の植物ポリフェノールは、抗酸化作用や抗炎症作用を有し、さらにエピジェネティックな働き、すなわち、DNAメチル化やヒストン修飾を制御するという。たとえば、野菜や果実に含まれているケルセチンは、ヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する。一方、妊娠期や授乳期に低栄養に曝された母体から産まれた児は加齢とともに肥満、糖尿病、骨格筋代謝の異常などを高率に発症することがわかってきた。これは、胎児や新生児の臓器が、栄養状態に対して、エピジェネティックな働きを介して適応し、その適応が成長後も続くためと考えられている。しかし、胎生期および乳児期の低栄養に起因する骨格筋代謝の異常に及ぼすケルセチンの影響に関する知見は少ない。そこで、授乳期に摂取するケルセチンの骨格筋における生理機能を明らかにするために、以下の実験を行ってきた。妊娠期に低蛋白食を、授乳期にケルセチン含有低蛋白食を摂取した母ラットから産まれた仔ラットの離乳後、45週齢まで高脂肪食を負荷した。その結果、授乳期のケルセチン摂取により、仔ラットの骨格筋中のトリグリセリド濃度は増加した。骨格筋のマクロファージの出現数及び筋線維化面積は増加した。また、ケルセチン摂取した群において線維芽細胞の掲出転換に関与するTransforming growth factor (TGF)-βの発現量が増加した。これらの結果は、発育初期にケルセチンを摂取すると、離乳後、仔の骨格筋の炎症を引き起こし、骨格筋の間質線維化を悪化させる可能性を示唆していた。慢性炎症が続くと、一方、オートファジーの機能障害やユビキチン-プロテアソーム系を介したタンパク質分解が進むことが知られている。今後は、肥満における骨格筋のタンパク質の生合成あるいは分解に及ぼすケルセチンの影響を調べる。
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