研究課題/領域番号 |
17K00925
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
山西 倫太郎 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (30253206)
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研究分担者 |
向井 友花 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60331211)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | システイン / メチオニン / 和食 / 西洋化食 |
研究実績の概要 |
マウスを、標準試料であるAIN-93M食群、システイン(以下Cys)合成には不都合でメチオニン(以下Met)リサイクルに好都合なビタミン構成のCTRL食(標準試料-V.B6+V.B12・葉酸)群、和食的な特徴をもつCys食(CTRL食+Cys)群、西洋化食的な特徴をもつFMet食(CTRL食+ラード・Met)群の四群に分け、10週間自由摂食させた後、血中総コレステロール濃度・血糖値等の一般的血液検査を行うとともに、血中TBARS・肝臓中総GSH量を測定することにより酸化ストレスを評価した。 (結果および考察)血中総コレステロール濃度は、CTRL食群と比較してFMet食群が有意に高値を示した。飽和脂肪酸を多く含むラードがコレステロール合成量を増大させたと考えられる。血糖値は、Cys食群と比較しFMet食群が有意に高値を示した。Cysが豊富な食餌に比べて、Cysが少なく高脂肪・高Metの食餌では、高血糖状態を引き起こす可能性が示された。血中TBARSは、AIN-93M食群と比較しCTRL食群で有意に高値であり、低V.B6によりCys合成が不足し、酸化ストレスが亢進したことが示唆された。一方、CTRL食群と比較しCys食群は顕著に低値であったことから、Cys供給により酸化ストレスが軽減することが示された。また、Cys食群と比較しFMet食群では高値であり、酸化ストレス亢進傾向が見られた。肝臓総GSH量は、全群間に有意差は見られなかったことから、本実験において肝臓中総GSHは、酸化ストレスの変化に大きく関与していないと考えられた。 以上より、和食の特徴を持つ餌料は、Cys供給量の増大に起因してマウスの生体内酸化ストレスを軽減することが示唆された。一方、西洋化食は和食と比較して、Cys供給量減少に起因する酸化ストレスの亢進、脂質代謝異常、糖代謝異常を引き起こす可能性のあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来であれば2019年度で終了の予定であった。その2019年度は、研究分担者の研究には進捗が見られたものの、研究代表者の研究室に研究協力者として見込んでいた卒論生の配属が無く、予定通りに研究を進めることができなかった。それで、1年間の期間延長を申請した次第である。一方で、並行して準備を進めていたこれまでの科研費研究で得られた知見をまとめた論文、すなわちβ-カロテンとレチノールが酵素グルタミン酸システインリガーゼの発現誘導を介して細胞内グルタチオン量を亢進させるがレチノイン酸にはこの効果が無いことを示した論文の内容を、研究代表者および研究分担者の連名で、食品機能性を研究する世界中の科学者が集う国際学会(ICoFF2019)にて発表することができたので、本研究グループの科研費での研究内容を国際的に知らしめるという面では成果があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本来、2019年度に予定していた生体機能に対する食餌の影響を分析する実験を、この延長年度に行いたい。検討する食餌としては、標準脂肪試験食(ただし、餌中のCys量は削減。かつ体内でのCys合成抑制のため、V.B6は削減しV.B12・葉酸を過剰に添加している)とそれにラードを添加した高脂肪試験食のそれぞれの試験食に対して、アミノ酸無添加 or Cys添加 or Met添加の計6群間での比較を予定している。それぞれの食餌を与えたマウスについてオボアルブミンを抗原として免疫する。免疫学的な測定項目としては、血清に含まれる抗オボアルブミンIgE抗体価・同じくIgG抗体価を予定している。また同じマウスより採取した脾臓粗抗原提示細胞画分(プラスチック付着細胞)のGSH量や、同細胞画分内に存在し酸化還元に感受性のあるカテプシンの活性等を測定することも考えている。 上記は、研究が滞りなく実施できる場合の研究計画であるが、現在、コロナウィルス感染症のパンデミックの影響で研究活動の一切が停止中である。今後、事態がどのように推移し研究の推進に影響するのか予断を許さない。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由>研究分担者は配分額をほぼすべて使用したが、研究代表者の研究室において、研究協力者不在に伴って研究を進めることができず、配分額のかなりの部分が残った。 <使用計画>この残額を研究資金として充当し、延長した最後の1年間、今後の推進方策に示した研究を研究代表者が実施することにより遣い切りたいと考えている。ただし、コロナウィルス感染症の状況次第では、研究を遂行することが不可能な事態も起こり得る。
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