研究課題
高リン血症は動脈硬化の促進因子であり、その健康被害は慢性腎臓病患者において長年問題視されてきた。しかし近年、健常者においても血清リン濃度の上昇が心血管疾患や死亡のリスクを増大させることが明らかとなり、血清リン濃度の管理が健康長寿を支える上で重要であることが解明されてきた。健常者における血清リン濃度の上昇は、食の欧米化 (動物性食品、飽和脂肪酸の摂取量増大)、加工食品の摂取量増大、食事摂取リズムの乱れ (朝食欠食、夜間飲食) など、近年に特徴的な食習慣の関与が示唆されるが、その関連性は明らかではない。そこで本研究は生体内リン代謝動態に及ぼす食習慣の関与を明らかにし、血清リン濃度の管理に適した食習慣を解明することを目的とした。若年健常者109人を対象に、空腹時採血、24時間蓄尿、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)による過去1ヶ月間の習慣的な食事調査を実施した。その内24時間蓄尿が不完全であると判断された6名を解析から除外した。BDHQの質問項目から主食 (米、パン、麺類) の摂取頻度により対象者を群分けし、血清リン濃度およびリン調節因子濃度、24時間尿中リン排泄量、および食事性リン摂取量との関連性を評価した。米およびパンの摂取頻度と血清リン濃度およびリン調節因子濃度との間に関連性は見られなかったが、麺類の摂取頻度が高い群は低い群に比べ、血清FGF23濃度が有意に高値を示した。また、麺類摂取頻度の高い群は、米およびパンの摂取頻度が高い群に比べ、血清リン濃度が有意に高値を示した。以上の結果より、麺類を高頻度に摂取することは、血清リン濃度の上昇に関与することが示唆された。
3: やや遅れている
当初の計画として、健常者を対象とした血清リン濃度と食習慣との関連性評価を予定しており、現在109名を対象として、採血、24時間蓄尿、体組成測定および食事摂取頻度調査を実施し、データを収集することが出来た。データ解析の結果、血清リン濃度と菓子類摂取頻度との関連性、主食の摂取頻度と血清リン濃度およびリン調節因子濃度との関連性を見出すことが出来た。しかし、当初の予定であった食事全体の総合的な評価に至っていないため、やや遅れていると判断する。
今後も健常者を対象として、血清リン濃度およびリン代謝指標と食習慣の関連性を評価する。現在までに、血清リン濃度およびリン調節因子濃度と摂取源別リン摂取量、各食品群の摂取量との関連性を評価した。しかし食事はリンだけでなく複数の栄養素や食品を同時に摂取するため、単一の食品群の摂取量だけでなく食事全体の摂取パターンとリン代謝の関連性についても評価する必要がある。また、同じ食事を摂取しても、摂取時刻等の食習慣により身体への影響は異なる。よって今後は、血清リン濃度およびリン代謝指標と食事パターンや食習慣との関連性について解析を進めていく予定である。
採血に必要な消耗品や血液の測定が、当初の予定金額より安価であったため、次年度使用額が生じた。次年度は、対象者数を増やすと共に、血清リン濃度およびリン代謝指標と食事パターンや食習慣との関連性について、更に詳細な解析を予定している。また、これまでの研究成果を英語論文にまとめて発表する。そのため次年度使用額は、対象者への謝金や血液検査委託費用、英文校閲料や論文投稿・掲載料として使用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Nutrition
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https://doi.org/10.1016/j.nut.2019.110694
The Journal of Medical Investigation
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https://doi.org/10.2152/jmi.67.151