高リン血症は動脈硬化を促進させ、心血管疾患など種々の疾患の発症リスクを増大させる。このことは、血清リン濃度が著しく上昇する慢性腎臓病患者において問題視されてきたが、健常者においても同様の関連が明らかとなり、血清リン濃度の管理が健康長寿を支える上で重要であることが解明されてきた。 健常者における血清リン濃度の上昇は、食の欧米化(脂質の摂取量増大)、加工食品の摂取量増大など、近年に特徴的な食習慣の関与が示唆されるが、その関連性は明らかではない。そこで本研究は生体内リン代謝に及ぼす食習慣の関与を明らかにし、血清リン濃度の管理に適した食習慣を解明することを目的とした。 ラットを標準食群、高脂質食群、高飽和脂肪食群に分けて各飼料を8週間摂取させ、リン代謝に及ぼす影響を評価した。その結果、高脂質食(特に飽和脂肪酸食)は標準食に比べ、小腸でのリン吸収を増大させることが示唆された。 次に、若年健常者を対象に、空腹時採血と簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)による習慣的な食事調査を実施し、血清リン濃度と食品摂取状況との関連性を評価した。その結果、血清リン濃度高値群は低値群に比べ、食品添加物を多く含むと推定される菓子類の摂取頻度が高かった。また、血清リン濃度およびリン調節因子濃度と主食の摂取頻度の関連性を評価したところ、米およびパンの摂取頻度と血清リン濃度およびリン調節因子濃度との間に関連性は見られなかったが、麺類の摂取頻度が高い群は低い群に比べ、血清線維芽細胞増殖因子23(FGF23)濃度が有意に高値を示した。また、麺類の摂取頻度が高い群は、米およびパンの摂取頻度が高い群に比べ、血清リン濃度が有意に高値を示した。 以上の結果から、高脂質食、菓子類および麺類の摂取頻度が高い食習慣は、血清リン濃度の上昇に関連する可能性が考えられた。
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