研究課題
新規な食物繊維であるWater Soluble Cellulose Acetate(WSCA)はセルロースとは異なり,無色無臭の水溶性の酢酸セルロースであり,セルロースに酢酸をエステル結合させ,水溶性にした化合物である.我々はこれまでWSCAを健常ラットに摂取させ,食物繊維と腸内細菌叢の関係を検討した.その結果,WSCAの摂取は炎症性腸疾患に抵抗性を示す細菌群を増加させること,血中中性脂肪を低減することを報告した.すなわち,WSCAは炎症性疾患に対して,プロバイオティクスあるいはルミナコイド効果を発揮する可能性を有する.本研究では,NASH病態モデルマウス(STAMマウス)のNASH発症が確認されている病態下における腸内細菌叢の変化を明らかにするとともに,新規の食物繊維であるWSCAの摂取は炎症性疾患の一つであるNASHの腸内細菌叢を変化させ,病態を改善するのではないかと仮定し,実施した.その結果,WSCA摂取はNASH病態下の腸内細菌叢,肝機能および血糖値を改善する効果を有していた.なお、WSCAは新規な食物繊維であり,セルロースのヒドロキシ基の一部をアセチル基に置換した水溶性の酢酸セルロースである.我々はこれまでWSCAが血中TG値の低下に有効であり,腸内細菌叢に有益なClostridium subcluster XIVa を含むOTU 940を増加させることを報告した.また、Clostridium cluster IV,XIVa 及びXVIIは制御性T細胞の増殖と分化に寄与することが示唆されているため、炎症性の疾患について、治癒及び予防効果あることが期待されている.すなわち、WSCAは肝臓炎症を軽減させ,病態を改善するのではないかと仮定して実施した.その結果,WSCA摂取はNASH病態下の腸内細菌叢,肝機能および血糖値を改善する効果を有することを見出した.
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