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2018 年度 実施状況報告書

摂食調節ペプチドGALPの脳ー消化器系のクロストーク

研究課題

研究課題/領域番号 17K00933
研究機関桐生大学

研究代表者

影山 晴秋  桐生大学, 医療保健学部, 教授 (00433839)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード摂食調節ペプチド / 消化管
研究実績の概要

ガラニン様ペプチド(GALP)は、視床下部弓状核で産生され摂食調節やエネルギー代謝に深く関与する神経ペプチドである。またGALPは遠心性の交感神経を活性化し、肝臓および脂肪組織で脂質代謝を亢進する。摂食調節は脳内の情報交換と統御だけで行われているわけではなく、脳内でのメカニズムと消化管などの末梢器官から、あるいは消化管への情報が、統御されることによって行われている。そこで、当該研究ではGALPの消化管に対する新規作用を明らかにすることを目的としている。当該研究の最終目標は、GALPの消化管機能に対する作用と、その作用による摂食抑制機構を明らかにすることである。本実験ではGALPを脳室内投与した後の摂食量減少に摂食調節に関わるホルモンの変動があるか否かをラットを用いて調べた。GALPを側脳室に投与し、4時間後に採血を行った。血漿インスリンおよび血漿グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)濃度さらには血糖を測定した。血漿インスリンおよびGLP-1濃度は、生理食塩水を投与した対照群とGALP投与群で有意な差を認めなかった。また血糖値も有意な差はなかった。前年度の結果ではGALP脳室内投与では血漿グルカゴン濃度が上昇したことより、消化管ホルモンの分泌を調節すること無く、GALPは遠心性の交感神経系を介して血糖上昇に関与している可能性を示した。視床下部外側野に存在しているオレキシン神経の興奮は、交感神経系を介して、インスリン分泌を変化させずに、骨格筋での糖取り込みを促進している。GALP神経は視床下部外側野のオレキシン神経に投射していることから、GALPはオレキシン神経を介して、インスリン分泌に影響せず骨格筋での糖取り込みを促進している可能性がある。その結果グルカゴンによる血糖上昇作用と骨格筋での糖取り込みが相殺されることによって血糖値が変動しないと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、GALPによる腸管免疫系に及ぼす影響を検討する計画を前年度立てたが、平成29年度の実験結果がまとまらなかったので、引き続き前年度の実験を行い、1)と2)の2つの実験を行う計画に追加変更した。1)GALP脳室内投与後の消化管ホルモンなどの変化を検討することと、2)栄養状態の違い(空腹か満腹)によるGALP mRNAの発現の変化までを行う計画であった。1)については血漿インスリンやGLP-1濃度の測定ができ、GALPはインスリンやGLP-1の分泌に直接影響しないことが明らかとなった。しかし2)に関しては、できる限り多くの器官で検討する必要があるため、大量の臓器摘出を行ったがサンプルの処理に時間がかかり、一部のサンプルしか全RNAの調製が完了していない。したがって次年度に検討することにした。また、腸管免疫系に及ぼす影響については手つかずだったので、やや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

平成30年度で未遂行であった栄養状態の違いによるGALP mRNAの発現量の変化について、引き続き行う予定である。GALPは中枢神経系において、小膠細胞からはIL-1βあるいは星状膠細胞からはプロスタグランジンE2を分泌する。これらは炎症性サイトカインであり、末梢組織ではマクロファージなどが産生する。最近の研究では、腸内環境を整えるために、プロスタグランジンE2が腸炎抑制を行っていることが明らかになってきた。2019年度は腸管免疫系に及ぼす効果を調べるためにあらたに以下の1)と2)の研究を行う。
1)GALP脳室内投与を行ったときに、腸管におけるIL-1βやプロスタグランジン合成酵素のCOX関連(COX-1、COX-2、PGES-1およびPGES-2)のmRNAの発現を検討する。
2)インドメタシンによる腸炎を惹起させ、GALPをラットに連続脳室内投与した後、1週間後に灌流固定し、小腸にあるリンパ小節周辺を摘出する。凍結切片あるいはパラフィン切片を作製し、マクロファージの浸潤等、腸炎に対する効果を免疫組織学的に検討する。

次年度使用額が生じた理由

脳室内投与に使用する大量のガラニン様ペプチド(GALP)ペプチドを購入するために、GALPペプチド代として計上していたが、使用量がわずかで済んだために、次年度使用額が生じた。また今年度は血漿GALP測定キットを複数個注文する予定であったので、そのキット代として予算を計上していた。しかし実験が遅れて、血漿GALP測定キットの購入に至らなかったため、次年度使用額が生じてしまった。次年度は、血漿GALP測定キットで血漿中のGALPを測定する予定である。また、脳室内投与を行うためのGALPペプチドを購入する予定でいる。したがって次年度使用額はこれらの消耗品費購入にあてる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Regulation of Feeding Behavior and Energy Metabolism by Galanin-like Peptide (GALP): A Novel Strategy to Fight Against Obesity.2018

    • 著者名/発表者名
      Takenoya F, Hirako S, Wada N, Nonaka N, Hirabayashi T, Kageyama H, Shioda S
    • 雑誌名

      Curr Pharm Des.

      巻: 24 ページ: 3926-3933

    • DOI

      10.2174/1381612824666181106111623.

    • 査読あり
  • [学会発表] 神経ペプチドGALPによる末梢組織での糖・脂質代謝への影響2018

    • 著者名/発表者名
      平子 哲史、和田 亘弘、影山 晴秋、竹ノ谷 文子、塩田 清二
    • 学会等名
      第72回日本栄養・食糧学会
  • [学会発表] 抗肥満ペプチドGALPによる末梢組織でのエネルギー代謝調節機構の解明2018

    • 著者名/発表者名
      平子 哲史、和田 亘弘、影山 晴秋、 竹ノ谷 文子、塩田 清二
    • 学会等名
      第39回日本肥満学会

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公開日: 2019-12-27  

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