ガラニン様ペプチド(GALP)は、ラットでは視床下部弓状核で産生される摂食調節作用のある神経ペプチドである。GALPは脳内で摂食調節のネットワークを構築し、食行動や熱産生機構の一端を制御している。またGALPは遠心性の交感神経を活性化することで肝臓および脂肪組織で脂質代謝を亢進させ、エネルギー代謝に深く関わっている。このように摂食調節は脳内の情報交換と統御だけで行われているわけではなく、脳内でのメカニズムと消化管などの末梢器官から、あるいは消化管への情報が、統御されることによって行われている。当該研究の最終目標は、末梢GALPのシグナルによる摂食調節機構を明らかにすることである。そこで、前年度の結果より、中枢神経のGALPによる消化管への影響は小さいと考え、今年度は、GALPのホルモンとしての役割を明らかにすることを目的とした。 栄養状態の変動によって、血漿中のGALP濃度が変化するのかをラットで検討した。24時間絶食群と自由摂食群で比較したところ、濃度変化はわずかであるものの、絶食群で有意に増加していた。血漿中にGALPがあることから、脳以外の器官でGALPが産生していることが推測される。これまでに白色脂肪細胞でmRNAの発現が認められているので、24時間絶食と自由摂食群の白色脂肪組織でのGALP mRNAの発現量で比較した。精巣上体周囲および皮下の白色脂肪組織においては、GALP mRNAの発現量に違いを認めることができなかった。したがって白色脂肪組織から分泌されるGALPは、栄養状態の影響を受けないことが明らかとなった。 24時間の絶食で血中GALP濃度が上昇したことより、摂食亢進作用の一部を担っている可能性が考えられるが、栄養状態の影響を受けやすい白色脂肪細胞でGALP mRNAの発現量が変化しなかったことから、摂食調節とは別の役割を担っている可能性も示された。
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