研究実績の概要 |
目的:大阪市の小学1年生、小学5年生と中学3年生の肥満とやせの分布を地域(区)別に比較検討する。 方法:対象は、大阪市教育委員会を通じ提供許可がえられた小学校106校と中学校42校の学童・生徒。平成27年度健康診断における体重と身長をもとに、生魚らが報告した計算式で肥満度を算出した。 結果: 1)高度肥満、中等度肥満、軽度肥満、痩せ(%)は各々、小学1年男(4,990人):0.30, 1,20, 2,48, 0,14。小学1年女(4,925人):0.26、1.20、3.07、0.10。小学5年男(4,761人):1.09、4.28、4.81、0.46。小学5年女(4,431人):0.70、3.54、4.45、1.06。中学3年男(3,726人):1.23、2.68、3.11、3.95。中学3年女(3,641人):0.69、1.95、2.91、3.05。2)男女とも小学5年生に中等度肥満と軽度肥満のピークを迎える。3)学年が上がるにつれて高度肥満とやせは増加し、中学3年では意外にも、男子のやせが女子を上まわる。 4)%肥満度(平均±SE)は、小学1年女子で6.34±1.17から-0.48±0.72、小学1年男子で4.22±0.85から-2.01±0.63と地域による偏りがみられた。5)小学校1年男子と全学年女子で、平均肥満度はその地域の平均年収と負の相関がみられた。[小学1年男子(r=-0.574、p=0.0033)、小学1年女子(r=-0.708、p=0.0001)、小学5年女子(r=-0.612、p=0.0015)、中学3年女子(r=-0.426、p=0.0381)]。 結語:大阪市内の学童・生徒の肥満度とやせの地域分布には、かなりの偏りがある。中学3年における、やせに男女とも注意が必要である。生活習慣病の予防には多元的な対策が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大阪市在住約6万人の児童・生徒のデータとして体格(肥満度、BMIのZスコアー等)を居住地区の特殊性から統計的に解析し、これまでに、第65回近畿医師会連合学校医研究協議会総会(神戸)、第120回日本小児科学会学術集会(東京)、第5回食事運動生活習慣をよりよくする会集会(箕面市)、第48回全国学校保健・学校医大会(三重県津市)でいずれも口頭発表した。また英語論文にまとめ、日本小児科学会英文雑誌に投稿し、リバイス中である。また2018年5月にアメリカ小児科学会(トロント)にてポスター発表予定である。 また東大阪市教育委員会と協力し、子供の生活に関する現状把握をするために、小学5年生と中学2年生、16-17歳の子供、それぞれ1,000件、およびその保護者3,000件にアンケートを送付した。貧困の状況とともに、子供の将来の希望を中心にアンケー調査した。その結果を集計し、貧困度と肥満度についても検討中である。 当初予定した食事聞き取り調査とともに、食事内容をカメラ撮影で記録し、提出を求める、その写真をもとに栄養士とともに食事内容を評価し、確立されたスケールを用いてカルシウムやマグネシウム摂取量を計測する予定であった。しかしながら、写真を送付してもらうに際し、個人情報守秘の点などの諸事情により、未だ実施に至っていない。またアンケートに回答してくれるボランティアは確保できても、食事記録を細かく記載して提出を要請するのが困難であった。たとえ協力が得られたとしても、食事の記録と写真を検証する術がなく、正確な情報収集が困難である。 そのため、代替え策として病院受診された肥満児の保存血清のアデイポサイトカインを、ELISA法で測定し、肥満度の経時的変化と糖尿病の発症病態との関わりについて検討を進めている。
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