研究実績の概要 |
[目的]子どもの相対的貧困は増加しており、子どもの心身発育に影響を及ぼしている。貧困が生活環境や体格に与える実態を調査し、子どもの貧困対策に必要な支援を目指す。 [方法]東大阪市の小学校5年生と中学2年生の各1,000名とその保護者に郵送によるアンケート調査を実施した。調査期間は平成29年8月から同9月。世帯所得額から等価可処分所得を算出し、困窮程度を4つの層に分類して調査項目を検討した。体格はBMIおよび身長の標準体重をもとに評価した(20%以上を肥満傾向、20%以下を痩せ)。 [結果]回収率は31.3%。1)等価可処分所得中央値以上49%、困窮度:強度13%、中等度7%、低度31%。肥満傾向は男(8.4%)、女(3.9%)、痩せは男(2.2%)女(7.9%)と性差を認めた。2)女子にのみ、年収中央値以下に肥満傾向/肥満が有意に多かった。3)困窮度の程度と朝食の欠食とは肥満と相関を認めなかった。両親の学歴が高校以下の群で、朝食の欠食率が有意に高かった。4)睡眠時間が7時間未満の群は、9時間以上の群に比して男女共BMIが高かった。5)帰宅後の勉強時間が1時間未満の群は学年による差はないが、困窮群と肥満傾向群で有意に多かった。6)貧困群では、書籍、運動用具、自分の部屋の所持率は低いが、携帯電話、スマホ、ゲーム機には群環に差がなかった。肥満群では書籍、運動用具、自分の部屋の所持率は低かった。 [結論] 貧困家庭でも携帯電話やスマホ、ゲーム機は与えられているが、塾通いの率は低下し、帰宅後の勉強時間が短く、教育格差が生じている。貧困が相対的概念で定義されているため、子どもの貧困は見えにくいが、学習面や健康面を通じて将来の人的資本の劣化を招来しかねないため、早急な支援と対策が必要である。
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