研究課題/領域番号 |
17K00950
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
福田 也寸子 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 准教授 (60586113)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FA母親 / 基本情報調査 / 食事調査 / 生活活動量調査 / 論文化 / 博士論文 |
研究実績の概要 |
今年度は、食物アレルギーを持つ児(FA児)の母親(FA母親)の生活特性の検討のうち、FA母親のBMI低値・痩せの要因を探索する調査研究を実施した。本研究はFA母親のBMI低値・痩せの要因を食生活及び生活活動量から検討する調査研究であり、アレルギー専門病院へ通院する、FA母親と非FA児の母親(NFA母親)を対象に、新規に登録し、①基本状況調査、②食事調査、③生活活動量調査を実施した。アンケートは、①基本情報として、FA児のアレルゲン食品の内容や個数、母親の年齢、身長、FA児出産前の体重及び現体重等のプロフィール、家族構成、代替食品使用状況等の情報を収集した。②食事調査は簡易型自記式食事歴法質問票を用いて調査した。③生活活動量調査はOMRON HJA-750C(本体質量23g(電池含む)の小型サイズ)を準備し、対象者に装着を依頼した。対象者への調査依頼方法は、当初の研究計画どおり、主治医による診察が行われる診察室に申請者も同席し、主治医が適切と判断し、主治医が概要説明をした後に、申請者が行う詳細説明に同意が得られた対象者のみに依頼した。なお、食事調査は、結果について栄養診断を行い、栄養診断の結果を被験者に郵送で返却した。活動量計は、10日から45日間の装着を依頼し、その後の次回診察時に返却を求め、申請者が回収した。 また、これまで蓄積してきたFA母親の食事調査の結果から、FA母親の食品消費構造を分析し、BMI低値・痩せに関与する食生活上の問題点の抽出を行い、論文化した。 さらに、本研究の基礎となった論文『食物アレルギー児を持つ母親自身の栄養素等の摂取状況とQOLに関する検討』をもとにして博士論文を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当該学科人事上の想定外の事象(同僚教員の病欠・休職に伴うKT数増加)の発生に伴い、調査研究日の確保が厳しかったが、新規登録の対象者は、100人超(うち8割はFA母親)まで進めることができた。アンケート調査はデータ収集が確実に実施できたが、生活活動量調査は約半数程度が不確実なデータであった。すなわち、活動量計の装着を、1日10時間以上、かつ2週間以上を有効データとした場合、確実なデータは50人程度であった。現在も調査を継続し対象者数を増やす努力を行っている。 また論文化は、2013年から2015年のFA母親の食事調査の分析結果を接合し、題目『食物アレルギーをもつ児の母親自身のBody Mass Indexに影響を与える摂取食品・栄養素等についての検討』として分析し、文章化した。FA母親305人(38.4(±5.1)歳)とNFA母親249人(37.7(±5.5)歳)を対象に、食事調査した結果から栄養素等および食品群別摂取量を算出し、主成分分析法を用いて食事パターンを抽出し、FA母親における生活特性と食生活の関係について検討した。現在、英訳化へと進めており、英語論文完成後は海外の学術雑誌へ投稿する予定である。 さらに、論文博士は、題目『実地医療の現場における栄養管理の意義と管理栄養士が果たす役割についての検証:病態別エネルギー産生栄養素比率の分析の意義』として執筆し、本学大学院研究科委員会で受理され審査に合格し、博士学位を取得することができた。臨床現場において、遭遇する様々な病態の患者に対して、治療効果やQOLを向上させるため、様々の取り組みの可能性があるが、特にFA母親も栄養サポートの対象として支援しなければならないという,従来見落とされていた視点の必要性を明らかにした研究と位置付けして言及した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、FA母親のBMI低値・痩せの要因を探索するために、さらに対象数を増やしてアンケート調査と生活活動量調査を継続する。主治医による診察日に合わせて申請者も診察室に同席し、主治医が適切と判断した対象者に同意説明を行って実施して行く予定である。データ収集後は、栄養素等の摂取量調査と活動量計を用いた生活活動量の実測調査結果の接合を行い、栄養素等の摂取量との関係、並びに摂取カロリーと消費カロリーのイン・アウト出納からBMI低値の要因を検討する予定である。 また、2013年に登録した、卵アレルギーを必ず持つ児の母親55名を対象に追跡調査も併せて実施する予定である。追跡調査は郵送法、あるいは郵送法による返却状況を鑑みて、それ以外の方法で行うことも検討する。内容は、前回と同様の食事調査、食意識調査、QOL調査を実施し、経年変化を検討する予定である。なぜなら、FA児は、成長に伴って消化吸収機能が発達してくると、原因食物に対して耐性がつき、これまで食べられなかった食物が食べられるようになったり、食べられるものが増えてきたりする可能性が高まる。しかし、アレルギーが起こりにくいレベルまでの感作の量を獲得するまでには数か月から数年も要する場合が少なくない。また、アレルギーマーチと呼ばれ、次から次へアレルギーが形を変えて進行していく場合もある。このような情況の中で、FA家族やFA母親の食生活や生活環境など生活特性が変化していくことが予想される。したがって、その場面ごとの状況を継時的変化として把握し、本研究の命題として取り組んでいく予定である。なお、研究成果は、日本小児臨床アレルギー学会や日本小児アレルギー学会において発表し、さらに論文化して行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
生活活動量調査に用いた活動量計は、初年度に40個程度購入し、破損や紛失の情況を鑑みて順次購入数を増やす予定であったが、申請者から対象者へ適切な使用方法の説明を心がけた結果、合理的な使い回しができた。したがって、消耗品費の節約ができた。次年度は翌年度請求金と合わせて次のとおり有効な使用を計画している。①統計ソフトSAS更新料(1年) @10万円×1年=10万円 食事調査の結果から主成分分析を行い、食事パターンを抽出するために、統計ソフト『SAS』が必要である。SASは1年契約であるため次年度も契約する必要がある。②英語論文2編にかかる費用 @70万円×2編=140万円 (英訳料:40万、投稿料:30万円) 本研究の命題である『食物アレルギー児をもつ家族(主に母親)の生活特性』について、FA母親のBMI低値・痩せの要因の検討に係る論文と、FA家族やFA母親の食生活や生活環境などの継時的変化についての検討に係る論文の2編を執筆する予定である。 ③その他 郵送料等 3万円、食事調査の結果は栄養診断を行って返却するための切手代である。以上の使用計画をたて、合計 153万円使用予定である。
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