研究課題/領域番号 |
17K00950
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
福田 也寸子 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 教授 (60586113)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FA母親 / 基本情報調査 / 食事調査 / 生活活動量調査 / 追跡調査 / 論文作成 |
研究実績の概要 |
今年度は研究課題「食物アレルギー児(FA児)をもつ家族(主に母親(FA母親))の生活特性の多角的検討:追跡及び活動量調査」をさらに進めるために研究調査の継続に尽力した。 生活活動量調査では対象者数を増やすことに努めた。方法は、アレルギー専門医が適切と判断した対象者に対し同意説明を行い、①基本状況調査(FA児のアレルギー原因食品の内容、FA母親の年齢・身長・出産前の体重及び現体重、家族構成、代替食品使用状況等のプロフィール調査)、②食事調査(簡易型自記式食事歴法質問票を用いた食物摂取頻度調査)、③生活活動量調査(3軸加速度計 OMRON HJA-750C 本体質量23g:電池含む を用いた生活活動量の実測調査)を依頼した。結果、総勢106人から同意を得た。このうち不適格者37人(34.9%)を除外し、適格者69人(65.1%)を解析対象者として作業を進めた。不適格者は3軸加速度計の装着が1日10時間未満、かつ10日間未満であった。 追跡調査は、2013年に登録した卵アレルギーを必ず持つ児の母親55人を追跡したところ、13人が継続受診していたが、残る42人は治癒・転居等の理由による未受診・未来院者であった。そこで対象者を拡大した。すなわち、申請者が2013年から2016年に調査を行った合計312人を対象とした。このうち追跡調査が可能な対象は146人であった。内訳は、2013年13人、2014年20人、2015年49人、2016年64人であり、残りの166人は、治癒・転居などによる未受診・未来院、調査協力拒否などであった。追跡調査は、FA母親146人を対象に2018年の状況(2年から5年後の状況)について調査(①基本状況調査、②食事調査)を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究課題をさらに進めるために論文作成にも尽力した。2013年から2015年に実施した調査の結果を接合して分析し、Title「A study on the effect of nutrient intake on the body mass index of mothers of children with food allergies」をAsian Pac J Allergy Immunolへ投稿し採択された。内容は食物アレルギー児をもつ母親305人(FA群:38.4(±5.1)歳)と、食物アレルギーをもたない児の母親249人(N群:37.7(±5.5)歳)の合計554人を対象に食事調査をした結果から食事パターンを抽出し、BMIと栄養素の関係を検討した。さらにFA群において児が保有する三大原因食品(卵・乳・小麦)を1個以下保有する181人と、2個以上保有する124人に2群化し、栄養素等摂取量を比較した。BMI はFA群の方がN群より有意に小さく(20.7 vs. 21.4 kg/㎡, P=0.007)、BMIと植物性たんぱく質摂取量に有意な負の関係性があった(P<0.001)。植物性たんぱく質摂取量は三大原因食品を2個以上保有する群の方が多い傾向 (P=0.074) にあった。また、高齢2型糖尿病患者における食事療養状況の分析を行い,野菜や果実類の摂取傾向がeGFRへ及ぼす影響について検討し、Title「Relationship between Food-Intake Trends and Estimated Glomerular Filtration Rate in Elderly Patients with Type 2 Diabetes Mellitus」を、J Nutritional Science and Vitaminologyへ投稿し採択された
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究課題のデータ解析と論文化、さらに関連学会での発表に注力する予定である。 活動量調査の対象者は69人とした。分析は、児が食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・気管支喘息のうちのどのアレルギー疾患を持つかにより群別し、母親自身のBMIに影響を及ぼす因子の分析を行う。食事調査の結果から主成分分析法により特異となる食事パターンを抽出し、3軸加速度計を用いた実測データから生活活動量を解析し、これら結果の接合・分析により、母親自身のBMIと食生活・生活活動量との関係を検討する。分析後は英語論文化を行い、完成後は海外の学術雑誌への投稿を試みる。 追跡調査は、FA母親146人を対象に、2年から5年後となる2018年の状況について2種類の調査(①基本状況調査:FA児のアレルゲン食品の内容や個数、FA母親の年齢、身長、現体重等のプロフィール、家族構成、代替食品使用状況等の情報、②食事調査)を行う。そして初回調査時の結果との比較から生活特性の継時的変化を把握する。FA児は、成長に伴って消化吸収機能が発達してくると、原因食物に対して耐性がつき、これまで食べられなかった食物が食べられるようになったり、食べられるものが増えてきたりする可能性が高まる。FA児の食事に同調する傾向がみられるFA母親においては、食生活状況が変化していく可能性が考えられる。分析後は英語論文化を行い、完成後は海外の学術雑誌への投稿を試みる。成果の一部は学会発表する。学会発表は、日本小児臨床アレルギー学会(2019年7月27日28日、和歌山)において一般演題発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究調査は、申請者自身が可能な限りアレルギー専門病院へ出向いて自ら実施したため、人件費等の雇用に係る費用が大幅に節約できた。その結果、合理的な使い回しができた。次年度は翌年度請求金と合わせて次のとおり有効な使用を計画している。①統計ソフトSAS更新料(1年) @10万円×1年=10万円 食事調査の結果から主成分分析を行い、食事パターンを抽出するために、統計ソフトSASが必要である。SASは1年契約であるため次年度も契約する必要がある。②英語論文投稿に係る経費として30万円 、③学術総会出張費 40万円、③その他 郵送料等 7万円、食事調査の結果等を返却するための切手代である。以上の使用計画をたて、合計 87万円使用予定である。
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