研究実績の概要 |
食物アレルギー児をもつ母親(FA母親)らを対象にFA母親のBody Mass Index(BMI)低値に関与する要因を探索しFA母親のBMIとその後の要因との関連性について追跡調査した. FA母親及び,FAをもたない児の母親(N母親)の計554人を対象に調査した.FA母親のBMIは植物性たんぱく質の摂取量に関係がみられ,その摂取量はFA児が保有する三大原因食品数が多いほど多い傾向がみられた.FA母親の食事はFA児に同調傾向にあることから,FA・N群母児の計78組を対象に調査した.食事内容の相関性はFA群の方がN群より有意に強かったが,FA母児間に一部乖離がみられた.FA母親の食事は植物性たんぱく質が優位であり,併せて穀類が負方向,菓子類(穀物ベースの菓子)が正方向という食事パターンが示され,BMI低値と関係していた.身体活動量の調査は,アレルギー疾患を持つ児の母親計69人を対象に3軸加速度計を用いた実測調査を行った.FA母親のBMI低値には低・中強度の身体活動が覚醒している間中継続していることと穀類摂取減・菓子類摂取増の食事パターンが関与していた. 追跡は2年から5年後の状態について,FA母親146人を対象に調査した.原因食品として卵を持つ児の減少に伴い,FA母親自身の卵類摂取量は有意に増加し,児に卵禁止が継続している例においても有意に増加していた.FA母親のBMIは微増していたが,植物性たんぱく質に一貫して負の関係が見られた. 以上より,FA母親のBMI低値には植物性たんぱく質が優位で穀類摂取は減,菓子類(穀物ベースの菓子)摂取が増という不適切な食事内容と,長時間にわたる低・中強度の身体活動とその継続が関与している可能性が示された.FA母親における栄養問題は次の妊孕や将来の健康を視野に入れると看過できない.FA児のみならず,FA母親への栄養支援も切要であることが明らかになった.
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