エビに代表される甲殻類アレルギーの主要アレルゲンのトロポミオシンは無脊椎動物において高い相同性を示し,広範囲に共通する汎アレルゲンとして報告されている。魚類寄生甲殻類や食用昆虫など,学術的知識の応用から甲殻類アレルギー患者での交叉反応リスクが懸念されながらも実際に調査されていないものに目を向け,トロポミオシンという共通アレルゲンの存在に焦点を絞って各食品やその調理品に含まれる濃度や含量を明確にするために研究を進め、平成29年度にキダイやマダイの口腔内に寄生するウオノエ類とこれらが混入した調理品(潮汁)にエビトロポミオシン様タンパク質が原材料表示義務の生じる濃度を超えて存在することを明らかにした。 平成30年度では昆虫や深海性甲殻類を原材料として加工された食品について、エビトロポミオシン様タンパク質の存在とその濃度を明らかにすることを試み、イナゴ、カイコガ蛹、トビケラ幼虫、ハチ幼虫の各甘露煮、およびオオグソクムシを使用した煎餅について、エビやカニであれば原材料表示義務が生じる濃度を超えてトロポミオシン様タンパク質が存在することを明らかにした。さらに、キダイ寄生ウオノエ類からのトロポミオシン様タンパク質のLC-MS/MS分析によって、これまでトロポミオシン様タンパク質としていたものウオノエ類由来のトロポミオシンであることを証明した。 令和元年度は、近年養殖量が増えているカンパチについても口腔内へのウオノエ類の寄生が頻発していることから、キダイの例と同様にして寄生ウオノエ類とこれらが混入した調理品(あら煮)のリスクについて調査した。その結果、寄生ウオノエ類からは高濃度の,あら煮調理品の煮汁からは原材料表示義務の生じる濃度のエビトロポミオシン様タンパク質が検出された。この結果より、宿主となる魚種や調理方法が異なる場合でもウオノエ類の寄生の有無に注意する必要があることが強く示唆された。
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