研究課題/領域番号 |
17K00956
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中野 博之 弘前大学, 教育学部, 教授 (30400120)
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研究分担者 |
清野 辰彦 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00550740)
早川 健 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40585387)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 深い学び / 数学的な見方考え方 / 現職教員研修 |
研究実績の概要 |
授業改善の視点である「主体的で,対話的で,深い学び」の中の,「対話的で深い学び」について,小学校の教員が研修会で経験できるようにするための,研修会用問題とその展開の仕方を考え,実践を行った。問題は平面上に直線を増やしていき,直線が100本になった時の交点を数を求めるものある。 まず,問題を提示し,一人一人で考える時間を確保する。そこから,つぶやきによる対話が生まれるように,事前に指導された教職大学院の院生が問題を解きながらつぶやかさせるようにした。すると,一人一人が問題に対峙しながらも,お互いにつぶやきによる情報交換を行う,いわゆる「真の対話的な学び」が発生し,参加者全員が正解を導くことができた。 次に,解決過程を見直す。そこでは交点の数を求めるに至った式を整理し,最終的に洗練された式から,問題の構造を考える様にさせた。その結果,全く異なった,組み合わせの数を求める問題と式になること,そして,問題を「100本の直線から2本を選ぶ組み合わせは何通りか」と同じことであることを見抜けば解けることを明らかにすることができた。このことより「深い学び」は適用問題を解くことではなく,数学的な見方・考え方を働かせて問題の本質を見抜きより汎用性のあるものとして捉えていくことであることを体験させることができた。 この実践より,対話的な学びを促進するためのコーディネーター的な役割を果たす者の必要性が明らかになった。また,全く別のものに見える事柄を式から同じと見る見方が小学校教員には深い学びを経験することに役立つことも明らかになった。 研修会用問題の設定とその展開の仕方を今後も開発,実践,省察をおこなっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始1年目では,29年版学習指導要領にある「数学的な見方考え方」「数学的活動」「主体的で対話的で深い学び」の関係を適切にとらえることに研究の重点をおいた。そのことに基づき,昨年度は,研修会用問題の設定と展開案を開発できた。そこでは,問題の在り方と,コーディネーター的な役割を果たす第3者の必要性を明らかにすることができた。こうしたことから「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,さらに研修会用問題を考えだし,教職大学院の現職教員学生を研修会コーディネーターとして位置付けた,研修会の展開案を開発,実践,省察をしていく。特に研修会コーディネーターの役割を明らかにすることで,より汎用性のある研修会用問題と展開案を作成することが期待出来る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年版学習指導要領解説算数編の発刊が昨年2月にずれ込み,それに伴い,昨年度は小学校教員に平成29年版学習指導要領解説算数編の主旨等が周知されていない状態となり,「主体的で対話的な学び」については追究されても,「深い学び」の追究についての研修会等が少なく,そのため,資料収集に値する研究会や研修会が限られ,また,研究についての会議の回数も予定より少なくなった。今年度は,学習指導要領解説算数編の主旨にそった,深い学びの実現に向けた授業研究が多くなることが予想されるので資料収集と研究についての会議をより多く開催する予定である。
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