研究課題/領域番号 |
17K00961
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加藤 徹也 千葉大学, 教育学部, 教授 (00224519)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有限要素法シミュレーション / 物理実験 / 身近な物理現象 / 物理概念への着目 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、身近な物理現象と教科書的な物理モデルのあいだを結ぶ有限要素法(FEM)シミュレーション計算をもとに、実験授業・講座等において討論活動を導入し、背後にある理論のもつ概念的な側面を着実に受講生に意識させる教授方法を確立することにある。平成29年度は現行の物理実験テーマについて、身近な物体と物理モデルとの中間の形状でシミュレーションを行い、多数の資料を整理してグループ討論のための足がかりを与える素材資料として用意し、実際に実践において活用した。 大学生への実験授業としては、切り取られた導電シートの上で二次元静電場分布の測定や電流場分布の推測を行う「等電位線の実験」において、実験方法の説明に討論活動を組み合わせた。境界条件のひとつは物体形状があり、身近なもの(リンゴ、キャラクター、錨マーク、あるいは一列に並んだ球など)と平坦な壁を導入し、絶縁壁(導電シートの外縁とおなじ)や導体壁(正負の電極とおなじ)とした。もう一つの境界条件である物体間距離や物体の向きを4通りに変化させたシミュレーションをさまざまな物体形状に対して多数セット行い、二人からなる学生のグループあたり3セットのカードとしてシャッフルして渡し、境界条件の変化に説明用のストーリーを考えさせたうえで、グループ間で発表させた。受講学生は電磁気学を十分に学んできていないものも多くいたものの、学生はシミュレーション・カード上の等電位線や電気力線の特徴を自ら見出し、これらの線の粗密や境界付近でのふるまいに注目することができた。物理の学習初心者にとって、着目すべき物理概念の表現も話題にできるような具体的対象物であることが重要であることが分かった。また、対象物を擬人化し、条件の変化を脚色する傾向も強かった。これらの活動を実験結果の解釈に結びつけるには、さらに資料作成上の工夫が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サーバー上で受講生がネットワークを介して自ら操作し、FEMシミュレーションの条件を変化させて計算を行うことについて、平成29年度8月に行った30余名の高校生への実験講座の一部で活用し、購入したワークステーションやネットワークを含むハードウエアやそのうえで動作するソフトウエアのスペック上の問題点やその解決方法について、想定ができている。具体的解決策として、旧式のワークステーション(実践時にエラーの原因と考えられる)を利用せず、新規購入したものだけでシステムを構築し、また、同時にアクセスできる受講生の数を絞ることが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には新たに、電磁誘導による渦電流を感じさせる実験講座を行い、渦電流のシミュレーションと合わせて行う方向で、これまでの実験講座を大きく修正する。この点の検討については、実験は科学フェスタ(千葉市科学館主催)の出展物として既に平成29年10月にプロトタイプとなるものを作成している。FEMシミュレーションについても既に計算例ができているが、計算時間を短縮するなど工夫が必要となっている。 物理実験のための資料としては、電子の比電荷測定に用いられるヘルムホルツ・コイルの内部での磁場分布を調べ、解析的な計算のできない動径方向について、磁場の一様度を判断できる資料や、ユーイングの装置によるヤング率測定など、不均一な物体変形を用いた物理実験テーマでの資料についても作成し、その活用方法について検討する。
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