昨年度、平成29年に告示された学習指導要領で大きな変更があった「化学変化と電池」の単元について、開発した探究的な学習を進めることを意図した教材を公立中学校で試行した。本年度、生徒のワークシートにおける記述を分析したところ、設定した課題について仮説を立て、実験計画を行い、実験を通して課題を解決する授業が実践できることが見い出された。ここで得られた知見は教科書の記述にも反映させるとともに、大学および教職大学院の講義においても、探究的な学習を進める事例として取り上げた。 本研究は定型に従って、生徒が事象から課題を見いだし、仮説を立て、実験計画を容易にできる実験教材の開発を目指しており、すでに国立大学附属中学校において試行的な実践と分析を行っているが、本年度はさらに、公立中学校の生徒を対象に燃焼に関わる実践と分析を行った。個々の生徒の状況を踏まえたていねいな支援を行うことで、課題を見いだし、仮説を立て、実験計画を行う授業を実践できること、同様の学習を繰り返すことが資質・能力の定着につながることが示された。 また、本年度は定型化した教材の特長を生かし、教員志望の学生を対象に実験方法を計画する教材を開発し、学生は生徒の立場で実践を経験した。その結果、学生が実験方法を計画する授業の意義や指導の視点を持つことができることが示された。特に、条件制御によって対照実験の計画を行う場面では、対照実験を想定できない学生が多いという課題がみられ、学生が自身の課題を認識することができた。また、定型化された教材によって、学生は対照実験の重要性を改めて実感し、実験計画を立てることの意義を認識できることが示された。
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