2019年度は、文系学部に属する学生を対象に、理科に関する意識調査を実施した。またその結果を踏まえ、学生の理系科目に関する苦手意識を取り除くにはどのようにすればよいかを研究した。 はじめに、研究代表者が所属する社会情報学部の学生221人に対して、アンケート調査を実施した。このうち、中学・高等学校の理科教員志望学生は1割程度である。「理科が好きですか」の問には「好き」が30%程度、「好きではない」が40%以上であった。「理科の学習はあなた自身の将来に役立つと思いますか」の問には半数が「役に立つ」と回答した。アンケートの調査後、同じ回答者を対象にして、天文学に関する1時限の授業を行った。事前調査にて生物の科目に苦手意識がないことが分かったため、テーマは宇宙と生命に設定した。土星の衛星エンケラドスの生命の可能性、太陽系外惑星の発見などを講義した。講義後にアンケート調査を再び実施した。「理科の学習はあなた自身の将来に役立つと思いますか」の問には「役立つと思う」が86%と増えた。事前調査の結果から数式や計算に苦手意識をもつ学生が半数以上であったことから、理科に対する苦手意識は数式や計算に関係する部分が多いと思われる。そこで、天文学に関する科目と地学関連の実験に関する科目を利用し、その授業で用いるための学習プログラムを開発した。大気圧、惑星の運動をテーマとしたこのプログラムでは、まず原理原則を学んだ後、簡単な計算演習を行う。次に、関連した実験・観察を行うことでより原理を深く学べるようにした。 さらに、教育学部に所属する理科教員志望学生とともに、天文学用の3次元ミリ波分子分光データから,分子ガスの積分強度図及び位置速度図の作成と表示を行うソフトウェアの開発を行った。このソフトウエアにより、大規模なデータを高速で可視化し、分子雲の速度構造を効率良く調査することができるようになった。
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