研究課題/領域番号 |
17K00968
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
山田 篤史 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20273823)
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研究分担者 |
清水 紀宏 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50284451)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 数学的問題解決 / プリフォーマルな表現 |
研究実績の概要 |
本研究は,算数・数学の問題解決的指導で導入される様々なプリフォーマルな数学的表現(児童生徒のインフォーマルな表現に基盤を置くが,より大きな数学的構造を提供し,フォーマルな表現を意味論的に支える媒介的な表現)に焦点を当て,(1)算数・数学の問題解決的な指導で,学習者がプリフォーマルな数学的表現の間及びプリフォーマルな数学的表現と他の表現の間の相互変換や対応付けをどのように理解しているかの実態を明らかにすると共に,(2)そうした表現間の相互変換や対応付けが問題解決的な授業の進展に果たす役割を明らかにし,(3)その知見を踏まえた算数・数学の問題解決的な指導の在り方について検討することを目的としている。 平成29年度は,(1)の達成のため,算数・数学の問題解決的な指導では,どのようなプリフォーマルな数学的表現が導入されているかについて,国内外の文献等をレビューした。 レビューでは,算数における割合問題の困難性に焦点を当てた。とりわけ,割合概念の表現の中でも平成28年度全国学力・学習状況調査算数A問題8番で問われた「全体に対する部分の割合」を表す様々な表現の理解について議論した。 レビューを踏まえて児童の算数学習履歴を考察する限り,先の問題に類似した「全体に対する部分の割合」を表す単独のテープ図のような図の登場頻度は低く,そうした図を使っての割合比較は児童にとって馴染みのないプリフォーマルな表現を使っての割合比較にしかなっていない可能性が高いというのが結論であった。また,そうした図の理解を支えるインフォーマルな表現にはどのようなものがあり,児童はどのようなインフォーマルな表現を基盤にして全体に対する部分の割合を表す(テープ図のような)プリフォーマルな表現を理解・解釈できるようになるのかについても,予備的な考察を行った。これらの結果は『イプシロン』誌59巻に纏められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,算数学習における割合概念の中でも「全体に対する部分の割合」に焦点化し,通常想定される算数学習の中で,学習者が当該概念に関わるプリフォーマルな数学的表現の間及びプリフォーマルな数学的表現と他の表現の間の相互変換や対応付けをどのように理解しているかについて,全国学力・学習状況調査の結果や文献レビューを通して検討した。実際の児童の理解の実態を授業分析するなどして検討することはできなかったが,複数年度の全国学力・学習状況調査の結果を検討したため,目的(1)については概ね達成されていると思われる。また,「全体に対する部分の割合」を表現しうるインフォーマルな表現・活動やそれに対応付けられうるプリフォーマルな表現を収集する中で,目的(2)(3)に連なる予備的考察も一部することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,平成29年度に焦点を定めた授業単元や概念について授業観察等を行い,データの蓄積に努める。特に,授業観察に当たっては,当該授業者に,授業中できるだけ児童・生徒の表現を黒板等に取り上げ,クラス全体でもそれらを共有し,授業におけるプリフォーマルな表現間の相互変換や対応付けに関する理解を問う段階を明示的に設けるよう依頼しておくことにする。なお,授業データの蓄積や実験調査の実行は主に研究代表者が行うことにし,それらの分析は,研究代表者と研究分担者が連携・共同して行うことにする。 また,焦点を当てた授業単元が年度後半であった場合には,その単元内容に関連しつつ児童・生徒の既習内容に対するインフォーマルな表現やプリフォーマルな表現をできるだけ収集できるような問題を作成し,予備的な調査としてデータを蓄積しておくことも検討する。この作業は,研究代表者が主として行うことにする。 さらに,平成31年度は,それまでに収集されたデータを分析し,プリフォーマルな表現間の対応付けに対する理解が,個人や集団での問題解決的の進展において果たす役割を明らかにしていくと共に,その理解を助長するための指導の在り方について検討していく。なお,ここでのデータの分析については研究代表者と研究分担者が連携・共同して行い,指導の在り方に関する検討は研究分担者が中心で行うことにする。研究の全体的なまとめについては,研究代表者が中心になって行うことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
レビューの内容を焦点化した結果,大規模な資料収集と整理を行わず,その目的で計上していた謝金を使用しなかったため,支出額合計も当初計画より少なくなった。 次年度は,研究打合せが当該年度より多くなるため,今年度の未使用額をその旅費に組み込んで使用する計画である。
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