研究課題/領域番号 |
17K00971
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伊藤 信成 三重大学, 教育学部, 教授 (60344272)
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研究分担者 |
浜部 勝 日本女子大学, 理学部, 教授 (00156415)
西浦 慎悟 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (50372454)
山縣 朋彦 文教大学, 教育学部, 教授 (70383213)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 天文学 / 教材 / 時間変動 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
天文分野は理科の中でも興味・関心が高い分野であるが,一方で高校での地学開講率は低く,天文学に関心を持つ高校生が系統的な学習をする機会は必ずしも多くない.この状況を改善するため,我々のグループでは,2011年度より現代天文学の事象を系統的に自主学習できる教材を開発してきた.これらの教材の一部は既にWebで公開され,自由に利用することができる.宇宙での現象は,空間的広がり, 時間的広がり,他波長での観測の3本柱をおさえることで総合的に解釈することが可能となる.本研究では,これまでの教材ではカバーしていなかった宇宙における時間変動現象に焦点を当てた教材を開発することで,これまで開発してきた撮像データを主とした教材,分光データを主とした教材と合わせ,宇宙現象の空間的広がり(撮像データ),波長的広がり(分光),時間的広がり(本計画)を網羅した総合的・系統的な教材を作成することを目指す.天体の時間変動は主として天体の位置変化と明るさ・色の変化の2種に大別でき,各々から天体の運動情報,サイズや表面温度の情報等を推定することができる.そこでテーマをこの2つのカテゴリーに分け,テーマ毎に時間変動現象に関する基本的な考え方・解析手法を習得できるようにする. 今年度は、時間変動現象として選んだテーマの中から、1)小惑星の軌道推定、2)運動星団、3)脈動変光星、4)超新星の光度変化の4種について扱った。この内、1)と3)のテーマについては、異なる時刻に撮影した画像を3色合成することで、対象となる現象を効率的に検証できることが確認できた。3色合成法は天体のカラー画像を作成する際に用いられる手法であり、解析の基本原理が簡便であることから、高校生にも理解がしやすいというメリットがある。2)については、過去の画像データを用いることで、短期間のデータでは難しい星の固有運動を明確に検出できることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で教材化を目指しているテーマは15種であり、その内の4種については、実績の概要に述べたように、おおむね教材化の目処が立っている。また、4種のテーマについてはデータ収集を始めている。このデータの中にはアーカイブ・データを用いることができるものもあるが、新たにデータ収集が必要なものがあり、その観測計画を立案中であるが、現状のところ大きな問題なくデータ収集が行える予定である。 一方で、当初教材化を目指していた幾つかのテーマ(太陽面振動の検出、星食・掩蔽)については、十分なデータの収集が難しく、教材化することは困難であることがわかってきた。これらのテーマについては、代替のテーマを選定し直すか、当該テーマを除いたもので教材セットを完成させるか検討中である。代替テーマを選定した場合には、新たにデータ収集の必要が出てくる可能性もあるので、2018年度前半までには、その判断を行っていく。 以上の状況であるは、全体としては概ね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の2年目にあたる2018年度は、次の5種のテーマについてデータの抽出・評価および教材化を行う:1)地球の自転周期、2)地球の公転周期、3)流星の輻射点推定、4)人工衛星の高度推定、5)小惑星の光度曲線。 これらの内、5)については既にアーカイブよりデータ抽出は終了しており、データの評価を行うこととしている。1), 3)については観測機器を調整中で、2018年度の8~12月にかけてデータ収集の予定である。2)については、新たなデータ収集が必要な場合、公転周期の推定のためには1年以上の継続したデータ収集が必要となるため、既存のアーカイブ・データを利用して教材化が可能かの評価を2018年度前半に終了し、新規データの収集について判断を行う。4)については、人工衛星の通過に合わせたデータ取得の必要があり、どの程度の頻度で観測のタイミングがあるのか、異なる軌道高度の衛星データ取得も視野に入れ、2018年度前半からデータ収集を開始していく。 以上のデータ取得計画により、2018年度に教材化に必要なデータの取得および評価を完了する予定であり、研究計画の最終年度に当たる2019年においては、具体的教材化および教材の効果の検証に主眼を置いて実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の計画では、教材リストに挙げたテーマについて教材化の適・不適を慎重に検討した上で、テーマに沿ったデータ収集を行うための観測機器の整備を予定した。しかしながら、検討の結果、一部のテーマについては精度の高いデータが必要であり、当初計画していた観測機器では対応が難しいことが確認され、それに伴う教材テーマの変更について改めて議論が必要となった。そのため、初年度はアーカイブ化されているデータを用いたテーマに焦点を当てて、データ収集およびデータの評価を行うことを優先した。アーカイブデータはネットワークを介してダウンロードできるため、特別な機器は必要ない。その結果、本来機器整備に充てる予定だった予算が繰り越しとなった。 2年目にあたるH30年度は、新たに掲げたテーマおよび当初掲げていたもののデータ収集ができていないテーマについてデータ収集を開始する。これらのデータ収集についてはCCD、デジタルカメラ等の機器が必要となるため、初年度から繰り越しになっている予算を含め、機器整備に充てていく。また、学会発表および研究打ち合わせに係る経費については、当初計画通り執行する予定である。
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