研究課題/領域番号 |
17K00973
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
廣木 義久 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80273746)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地層形成実験 / 地層の学習 / 小学校 / 理科 |
研究実績の概要 |
昨年度は,小学校理科第6学年の地層の学習において実施するのにふさわしい通常流による礫・砂・泥からなる地層形成実験として,ドーナツ型水槽を用いた実験を考案し,その有効性を確認した.ドーナツ型水槽を用い,投入する試料の種類を変えて行った6つの実験のうち,細礫と極細粒砂,細粒砂と極細粒砂,細粒砂と泥を用いた3つの実験において,明瞭な縞模様からなる地層が複数枚形成されることがわかった.そこで,ドーナツ型水槽を用いた実験は小学校理科で実施するのに適した実験であるとの結論を得た. しかしながら,課題も明らかとなった.昨年度の実験では,実験前に試料をフルイにかけて,粒径をそろえていた.小学校の授業で同様の実験を行う場合,試料をフルイにかける作業は教員にとって負担であり,時間的にも難しい.もし,市販の土や砂を,フルイにかけることなくそのまま使用できるのであれば,実験が実施しやすくなる.そこで,本年度は,ドーナツ型水槽を用いた装置で,市販の土・砂をそのまま用いて,明瞭な縞模様からなる地層が複数枚形成されるかどうか,について調べた.使用した試料は,市販のマサ土,川砂,花の土,黒土の4種類である.4種類の土・砂のみを用いた実験とマサ土と黒土,川砂と黒土を用いた実験の計6つの実験を実施した.その結果,マサ土と黒土を用いた実験と川砂と黒土を用いた実験において,地層境界の明瞭な地層が複数枚形成されることがわかった. また,本年度は,通常の堆積学的研究で用いられる直線型水路を用いて,小学校理科で実施するのにふさわしい地層が形成されるかどうかについても検証した.投入する試料を変えた4つの実験を実施したところ,細礫と細粒砂を用いた実験と細礫と極細粒砂を用いた実験において,ほぼ平行で明瞭な4枚の地層が形成された.そこで,直線型水路を用いても通常流による礫・砂・泥からなる明瞭な地層が形成されることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小学校理科第6学年の地層の学習において実施するのにふさわしい地層形成実験の研究・開発において,本年度の研究の目標として,次の2つを設定した.(1)ドーナツ型水槽を用いた装置で,市販の土・砂をそのまま用いて明瞭な縞模様からなる地層が複数枚形成されるかどうかを検証すること.(2)通常の堆積学的研究で用いられる直線型水路を用いて,通常流のもと,礫・砂・泥からなる明瞭な縞模様からなる地層が複数枚形成されるかどうかについて検証すること. (1)については,手に入りやすい市販の土・砂で,実験前の処理をせずに用いても,明瞭な縞模様からなる地層を形成させられる組み合わせのあることを明らかにすることができた.(2)については,細礫と細粒砂を用いた場合と細礫と極細粒砂を用いた場合に,明瞭な縞模様からなる地層が複数枚形成されることを明らかにすることができた. 以上のように,今年度は,当初に計画した研究を計画通りに実施することができ,かつ,目標設定した2つの研究のいずれにおいても,しかるべき成果を上げることができたことから,現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,ほぼ当初の計画通りの研究を実施することができた.本年度の研究では,ドーナツ型水槽を用いた地層形成実験と直線型水路を用いた地層形成実験のいずれにおいても,小学校理科で形成させたい,通常流による礫・砂・泥からなる明瞭な縞模様を示す複数枚の地層が形成されることがわかった.特に,ドーナツ型水槽の実験において,市販の土・砂を用いても適切な地層が形成されることが明らかになったことは,小学校の教員が,実験の準備に時間を費やすことなく実施できる実験の開発という,本研究課題の目的の達成に大きく近づいたと言える. 本研究で考案・開発・検証した,ドーナツ型水槽と市販の土・砂を用いた実験は,このままでも,十分に小学校理科で実施できる実験ではあるが,さらに,この実験をより簡単にできる実験へ進化させることを次年度(最終年度)の研究の目標としたい.アイデアとしては,ドーナツ型水槽に代えて,どこの理科室にもある備品であるビーカーを用いて,ビーカーに市販の土・砂を入れて行う実験を考えている.ビーカーを用いた実験であれば,特別な器具や道具を用意する必要もなく,より簡単に実験を実施でき,かつ,使用する試料も少量で済む.準備と後片付けも容易である.また,ビーカーと市販の土・砂を用いた実験の有効性の検証に加えて,この実験による,児童の地層形成についての理解についての概念調査も併せて実施したいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に生じた次年度使用額は11,209円であり,本年度の研究実施にあたり,当初の使用計画におおむね沿った使用実績となった.生じた次年度使用額は,次年度の地層形成実験研究のための材料費等に使用する予定である.
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