研究実績の概要 |
本研究の目的は,中学校数学科の領域「関数」における課題探究型の説明学習の学習水準の移行過程を実証的に明らかにすることである。研究1年次としての本年度は,中学校第1学年を対象に(1)学習水準の移行過程に基づき意図される学習活動を単元「比例と反比例」において具現化すること,(2)授業実践を通して各授業化の成果と課題を明らかにすることを主な目的とし,研究を進めた。まず,中学校第1学年における学習水準の移行過程に基づき意図される学習活動を,本研究では次のような「反比例」を題材する授業として具現化した。 [1時間目(O→(O, C2))の概要](問題)温めの目安が500Wで4分0秒,1000Wで2分0秒,1500Wで1分20秒のお弁当がある。800Wの電子レンジでは,何分何秒温めればよいか。(めあて)800Wのレンジでの温め時間を予想し,その予想が正しいことを簡潔に説明しよう。(まとめ)予想が正しいことの説明には,次の3つ(利用した関数とその根拠,関数の式とその使い方,予想)が必要である。 [2時間目((O, C2)→(P2, C2))の概要](問題)あるナースウォッチでは,20回の脈拍にかかる時間から1分間の脈拍数を予想できる。例えば,20回の脈拍にかかる時間が15秒のとき1分間の脈拍数は80回,20秒ならば60回と予想できる。20回の脈拍にかかる時間が24秒のとき,1分間の脈拍数は何回と予想できるか。(めあて)1分間の脈拍数を予想し,3つの視点を使って予想が正しいことの説明を作ろう。(まとめ)3つの視点を使うと簡潔で分かりやすい説明を作ることができる。 また,授業実践を通して明らかになった事柄は次の点である:a)3つの視点をもとに説明を構想することは説明を自律的に構成する一つの手立てと成り得ること。b)説明の構成の授業では発見と正当化の文脈を切り分けて指導することが求められること。
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