研究実績の概要 |
本研究の目的は,中学校数学科の領域「関数」における課題探究型の説明学習の学習水準の移行過程を実証的に明らかにすることである。研究2年次としての本年度は,中学校第2学年を対象に(1)学習水準の移行過程に基づき意図される学習活動を単元「一次関数」において具現化すること,(2)授業実践を通して各授業化の成果と課題を明らかにすることを目的とし,研究を進めた。まず,中学校第2学年における学習水準の移行過程((P2, C2)→(P2, C3))に基づき意図される学習活動を,次のような「富士山の気温」を題材とする一連の授業として具現化した。 【1時間目】(問題)里奈さんたちは8月に富士山の6合目(2500m)まで登る計画を立てている。富士山の山頂や麓には観測所があるが,6合目には観測所がなく,気温が分からない。6合目の気温はどのように調べたらよいだろうか。(めあて)標高と気温の関係を調べ,6合目の気温を予想する方法を考えよう。(まとめ)点がほぼ直線上にあることから,気温は標高の一次関数とみることができる。 【2時間目】(問題)1時間目と同様。(めあて)気温を標高の一次関数とみなし,河口湖と富士山頂のデータから6合目の気温を予想しよう。(まとめ)一次関数とみなすと,グラフや式を使って6合目の気温が予想できる。 【3時間目】(問題)里奈さんたちに6合目の気温を求める方法を教えてあげたい。どのように説明すればよいだろうか。(めあて)里奈さんたちに6合目の気温の求め方を説明しよう。(まとめ)説明には,次の4つが必要である:利用した関数とその根拠,みなした理由,関数の式とその使い方,予想。 また,授業実践を通して明らかになった事柄は次の点である:a)説明に必要な要素を生徒から引き出すための手立てが必要であること。b)特に,解釈した結果に伴う制約の要因について,理解を促す指導の工夫が求められること。
|