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2019 年度 実施状況報告書

人文・社会系学部におけるデータ分析を機軸とした数理的教育の構築

研究課題

研究課題/領域番号 17K00983
研究機関拓殖大学

研究代表者

森 園子  拓殖大学, 政経学部, 教授 (70279686)

研究分担者 中村 竜哉  拓殖大学, 商学部, 教授 (20241416)
服部 哲也  拓殖大学, 政経学部, 教授 (20603468)
西村 圭一  東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (30549358)
二宮 智子  大阪商業大学, 総合経営学部, その他 (50328019)
船倉 武夫  千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (70131620)
田浦 元  拓殖大学, 政経学部, 准教授 (80386474) [辞退]
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード経済・経営・社会系分野における数学 / 数理的教育とICT活用 / データ分析 / 数学リテラシー / 社会で必要とされる数学 / 生きるための数学 / 職業と数学 / フィンランドの数学教育
研究実績の概要

平成31年度(令和元年度)における研究実績概要を示すと,以下の①~④のようである。①本研究で明らかにすることの筆頭に挙げた,文系学部におけるデータ分析に必要な数学基礎力の明文化・水準化について検討・実施した。その結果,経済学(ミクロ経済・マクロ経済・経済統計)及び,経営学・ファイナンス・金融分野において必要とされる数学内容や項目の全容がほぼ明らかになった。また,本年度においては,薬学・看護系分野で必要とされる数理的内容についても検討し,経済学及び経営学との類似点・相違点を探り考察した。② ①を踏まえ,大学入試との関連を探った。③ ①を踏まえ,社会が求める数学の内容を探ることにおいては,海外比較の観点から,米国の高校生対象の数学問題集を選定し,翻訳して出版した。この問題集は,日本では初等・中等教育対象と思われるが,高大接続の観点からも興味深い。数学の内容項目(78項目)と職業(100種)を結び付けて対応させた書であり,広く進路指導にも有用である。翻訳の過程で,社会で実際に求められている数学の現状を知り,造詣の深い教育方法論に触れる事ができた。④海外調査を実施し,オウル大学理科・数学センター,教育学部,オウル大学経済・経営学部,Oulunsalo高校等を訪問調査した。現在日本の大学で起きている数理的な内容に関する学生の学力低下の問題に焦点を当てたものであった。フィンランドの高校数学では,長い数学(理系数学)と短い数学(文系数学)がある。オウル大学理科・数学センターの調査に依れば,全国統一の高校卒業試験で,数学は必修科目では無いが,33%が長い数学を受験し,46%が短い数学を受験するという。特筆すべきは経済学部の50%が,高校時に長い数学を履修している事実である。従って,文系学部における数学の学力不足問題は少ないという。高大接続の観点からも興味深く多くの知見が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成31年度においては,海外比較として米国の高校生対象の問題集を選定・翻訳を進め,出版することができた。現実社会(職業)と数学を結びつけた問題集であり,本研究の目指す経済・社会・人文系学部(看護・薬学を含む)における数理的教育の重要性に対する意識が大きく触発された。また,海外調査を実施し,フィンランドの中学・高校・大学の関係者と討論し多くの知見を得ることができた。しかし,研究分担者1名(経済統計を担当)が5月に急遽退職,さらに他1名(経営・ビジネスを担当)も学部長に就任という予期せぬ状況が生じ,当初の研究計画遂行に予定より時間を要する結果となった。研究計画に沿って研究実施項目と現状を記述すると,①~③のようである。①各分野に含まれるデータ分析に関する数理的内容の収集と分析については,経済学・経営学分野において進め,ほぼまとまりつつある。金融においては,PISA金融リテラシー調査及び金融広報中央委員会(日本銀行内)による金融リテラシー調査結果について検討した。今後は,それらの内容や項目が,現在の数学や統計学の内容とどのように関連しているかを,入試との関連を踏まえ系統的にまとめる必要がある。②高校数学と連携した数理・統計教育の内容及びカリキュラムを考案することにおいては,海外調査で得られたフィンランド及びフランスの大学カリキュラムが興味深い。フィンランドの大学では,学士卒業要件180単位であり,必修35単位の内数学(7単位),統計学(5単位)である。経済・経営学部の数学教育として「ビジネス履修者向け数学」が,1年生必修(7単位)として位置付けられ,このことが非常に効果的であると思われる。③ ①を基に,順次性を持ち体系化された学習内容のテキストを検討・改良し,事例的に作成することにおいては,上述のようにやや遅れがある。

今後の研究の推進方策

令和2年度の研究計画内容を具体的に述べると,以下の①~④のようである。
①各分野の中に含まれるデータ分析に関する数理的内容の収集と分析については,入試との関連を踏まえ,それらの項目や内容が,統計学及び数学におけるどの内容に対応しているかを関連・対応付ける。その上で,それらの項目や内容を数理的な観点から見て,レベル別に階層構造を持つような系統図を作成する(研究報告書作成)。
②海外調査の結果(海外比較)を論文としてまとめ学会および研究会で発表する。それらを基に,高校数学との新しい連携の視点に立った数理・統計教育の内容及びカリキュラムを検討し,大学においては,事前教育,初年次教育,全学部共通科目,また必修科目,選択科目及び,学年配当等でどのように位置付けることが最も有効かを探り提言する。学会及びシンポジウムを企画し広く公表し,意見を募る。
③ 上記①を基に,順次性を持ち体系化された学習内容・体系を検討・構築し,授業実践例を挙げ,テキストを事例的に作成する(テキストの作成)。
④以上を踏まえ3年間の研究成果をまとめ,全員で報告書を作成する。成果を,Web上で情報発信すると共に学会及びシンポジウムを行い,報告書を関係諸機関に送付する。

次年度使用額が生じた理由

理由:今年度実支出額として937,217円(直接経費),残金1,155,426円が計上され,従って次年度使用額は1,155,426円となった。その理由として,平成31年度(令和元年度)の研究費の内,研究報告書の印刷・製本及び郵送費用を50万円,海外資料の翻訳費として20万円を計画していたが,研究報告書の作成その他にやや遅れが生じたことが大きく挙げられる。さらに,研究分担者においても,来年度にPC関連の必要機器の購入及び,資料の翻訳を計画していること等も主な原因である。
使用計画:令和元年度における次年度使用額は,海外調査で収集した資料の翻訳その他を早急に進め,研究報告書を作成すること,さらに印刷・製本し関係各所へ郵送することに使用する。さらに,「今後の研究の推進方策」③に挙げたテキストの作成においても会議費用・図書費用・その他として使用する。また,研究分担者においても,計画通りに必要機器,資料の翻訳を進める。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 文系数学の観点から見たフィンランドの数学教育2020

    • 著者名/発表者名
      森 園子
    • 雑誌名

      2020年度数学教育学会春季年会予稿集

      巻: 無し ページ: pp.37-39

  • [雑誌論文] 社会が求める数学とその内容-その数学,一体どこで使うの?と聞かれたら-2019

    • 著者名/発表者名
      森 園子
    • 雑誌名

      第25回大学教育研究フォーラム発表論文集

      巻: Vol.25 ページ: p.247

  • [学会発表] 文系数学の観点から見たフィンランドの数学教育2020

    • 著者名/発表者名
      森園子
    • 学会等名
      数学教育学会
  • [学会発表] 商学・経営学分野で必要とされる数理的内容について2019

    • 著者名/発表者名
      中村竜哉
    • 学会等名
      日本経営数学会
    • 招待講演
  • [図書] この数学,いったいいつ使うことになるの?2019

    • 著者名/発表者名
      森園子・猪飼輝子・二宮智子
    • 総ページ数
      pp.184(共訳書)
    • 出版者
      共立出版
    • ISBN
      978-4-320-11377-0

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公開日: 2021-01-27  

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