研究課題/領域番号 |
17K00987
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
坂本 正彦 常葉大学, 教育学部, 准教授 (60779510)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 授業設計 / 生徒の発言 / 主体的な活動 |
研究実績の概要 |
数学的活動は問題解決を通して実践することが謳われているが,現実の教室では生徒主体の問題解決学習ではなく,教師主導の「知識注入・反復練習」になりがちのように思う。昨年度参観させてもらった授業では,丁寧であったり,子どもに寄り添っているという教師の姿勢は認められるものの,結局多くの生徒は教師や教師に指名された生徒の説明を聞くことに終始している。この原因を授業設計の考え方に問題があるのではないかと仮説を立ててみた。 伝統的な授業設計では内容中心の展開をPolyaやLesterに従って行われ,代表的な習得過程と考えられる展開に従って,想定する生徒の活動考えてく。上手くいかなかった授業の後に授業者に聞き取りを行うと,多くは教材理解の不足だったり,生徒の実状把握が不十分であることに行き着くが,教師の意識は生徒の活動ではなく教科の内容に置かれ,結果,生徒の活動は教科内容の典型的な理解の道筋に従属させられがちとなる。 そこで授業設計を,単元内容の決定後数学科の達成目標を意識しつつ,生徒にはどうやってその目標を達成して欲しいのか,達成の過程で気付いて欲しいこと,発言して欲しいことを先に決定する。そしてそれらの発言・行為を実現させるにはどうしたらよいかを緻密に検討する。そうして設計した授業では(そうするように教師は振る舞うので),生徒同士の議論や探究しようとする行為が明らかに顕著になった。また予めできるだけ生徒の行為を想像しておくために,予想外の生徒の活動は激減させられた。 このような授業設計では,生徒に行って欲しい活動,発言を引き出すにはどうするかを生徒の実情に合わせて考えることが求められる。授業設計において,設定した内容の中で望む具体的な生徒の活動の実現に焦点を当てることで,結果,生徒はその活動を実現するために主体的に取り組もうとすることは,筆者の提案を受けた他の先生の実践でも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度,これまで参加してきた研究会のひとつが,ある理由により,例会を1回も開かないまま1年を終えてしまった。別の研究会では,教師の多忙を理由に,参加者が激減してしまった。それ故,先生方への提案や協議の機会を確保するのが難しく,自然,開催された研究会や自身が企画立案した授業研究会では,筆者の提案にとどまってしまうことが増えてしまった。 また,自ら幾つかの実践を行うことは十数回できたのだが,他の先生の協力を得ることが困難な年であり,授業参観もあまりこなすことができなかった。そのような結果,立てた研究仮説を実証するための機会を広く多く持つことができず,どうしても特定の先生とのやりとりに限定されがちとなってしまった。 また年が明けてからは,コロナウィルス問題で会合を持つこと自体が不可能となってしまい,年度末に予定してた授業研究会,調査研究はすべて延期せざるを得ない状況で,当初の計画はかなりの変更を行わなければならなくなった。 そこで次年度,コロナウィルスが沈静化した後,実施するための具体的な調査研究方法をも直すこととした。所属する大学の学長,理事長と相談,許可を得,附属中学校で恒常的な授業を受け持つことが予定されることになった。この筆者による授業時間を,研究仮説の実証に当たることを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
筆者が一昨年立ち上げた研究会も,参加者が減ってしまったのではあるが,新たに賛同者が出てきたので,来年度に向けて,共同で研究内容について検討したり,実践してもらう機会を増やして行くことが可能になると考えられる。もう一つは,特定の学校で,筆者が継続的にフィールドワークを行うことが約束されたため,今年度と比較すれば,格段に実証機会が増やせると思う。それにより,筆者の実践もその学校の先生方と共有することを物理的に増やすことが可能となるので,筆者による研究仮説の実証を担当するクラスで行うと同時に,筆者による授業実践をもとに,当該校の先生方との研究協議の時間を設定することで,より客観的で深い議論が行えると期待する。 ただ,5月現在,コロナウィルス問題は未だ沈静化されず,休校措置が5月一杯続くことが決められた状態となっている。学校現場においても,4月からの通常の教育活動が二ヶ月先送りになることで,予定された様々な活動が縮小,変更,中止を余儀なくされることが予想される。そのような状況の中で,昨年度末に立てた研究方針がどこまで実践できるかは未定な部分が少なくない。今後,状況に応じて新たに研究計画を修正し,実現できることを明確にしていきたい。 筆者自身の授業実践の場としては,中学1年生(週5時間で通年),中学3年生から高校3年生までを対象とした選択クラスで(週2時間,半期)を得られることが予定されている。ここでの成果は,当該校の先生方と協議することを相談している。 また,静岡市内の定期的な研究会も再会されるように聞いているので,自らの実践を協議の場に紹介し,より広い先生方とのやりとりをまとめていけるように考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の日本数学教育学会第8回春季大会(筑波大学)と,日本数学教育学会第102回全国算数・数学教育研究(茨城)大会にて,研究の一部を発表時の資料を簡易製本のために予算を残した。ただ,2020年4月30日の時点で,コロナウィルス問題の影響で,どちらの大会も論文誌発表となり,それぞれ現地での大会自体は開かれなくなってしまったので,予算計画は次年度再考する予定でいある。
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