研究課題/領域番号 |
17K00992
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
木室 義彦 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (30205009)
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研究分担者 |
家永 貴史 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (00393439)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 視覚特別支援学校 / 移動ロボット |
研究実績の概要 |
初等中等教育において求められている早期プログラミング教育に対し,携帯情報端末とプログラミング対象としてのロボット教材や他教科のIT教材とを接続することを目的とし,児童生徒のプログラム(アルゴリズム)の学習を支援するための要素技術を開発した.この開発では,よりユニバーサルデザインが求められる視覚特別支援学校(盲学校)と協力し,研究開発を進めた. 今年度は,他教科の教材と接続することを考慮し,汎用のマイコンボード Arduino UNO R3をロボット教材のターゲットとした.通常,Arduinoのプログラミングでは,統合開発環境の Arduino IDE,または,有線ないし無線のシリアル通信を介した Scratch などのビジュアルプログラミング言語が用いられる.しかし,このようなビジュアルプログラミング言語は,全盲や弱視の児童生徒にはほとんど利用不可能である.これに対し,盲学校教諭との議論から,携帯情報端末(スマートフォンやタブレット)ではなく,全盲の児童生徒でもタッチタイプ可能なように,16個のキーしかないキーボードをプログラム入力インタフェースとすることとした.移動ロボットの制御プログラムは,Arduinoのフラッシュメモリにプログラムインタプリタとして実装した.このインタプリタでは,0から 9の10個の数字キーのみで入力可能なロボット言語の設計となっている.数字キーの配列は,電話型と電卓型の双方に対応できるが,視覚障害のある児童生徒にとっては,どちらもなじみがあるものである.設計したロボットプログラミング教材の操作性を検証するために,盲学校小学部3年および5年の児童を対象として実験を行った.実験より,全盲や弱視の児童でも15分以内でプログラムが入力可能になることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,スマートフォンを用いた簡易インタフェースを開発し,これまで我々が開発してきたプログラミング教材の移動ロボットと結合するとしていた.しかし,視覚特別支援学校ならびに晴眼児童生徒の通う中学高校の教諭と議論した結果,より簡易なインタフェースとして,ロボットに直接キーボードを搭載し,これによるプログラミング環境を構築する方が晴眼盲弱を区別せず,また,PCやスマートフォン,タブレットの操作に不慣れな教諭でも指導可能との示唆を得,移動ロボット教材単体で完結するプログラミング教材を実装した.プログラミング教育のシナリオ(シラバス)については,プログラミングの導入に係る時間が最も大きいことから,これを検証するために,実際に福岡盲学校小学部において開発した移動ロボット教材でプログラミングの授業を行った.この実験授業では,全盲弱視であっても,15分以内で全児童がプログラムの入力と実行ができるようになることを確認した.また,小学校の他教科への導入も容易であることが確認できた. これにより,平成29年度に予定していた,3つのサブテーマ,(1)ロボット教材およびその他の接続可能な教材の開発,(2)操作I/F開発,(3)検証実験のそれぞれが,当初予定していたものとは異なる実現手法であったが,実現できている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,システム開発のサブテーマ1,2と,検証のサブテーマ3を交互に実施していく.平成30年度に確定することとしていた対象マイコンボードについては,Arduino に固定し,RasberyPi や IchigoJAM などの他のマイコンボードへの展開可能性について,検討を進める.シナリオの設計については,小中高の学習の流れを考慮し,各学校の各教科の教諭が参考になるようなものを作成する.これらの検証は,主として視覚特別支援学校にて,また,現在,協力を依頼している他の小中高の教諭との議論を通じて,晴眼児童生徒の在籍する小中学校でも検証実験を行う.これにより,晴眼盲弱を区別せず,他教科に転用可能なプログラミング教材の条件を明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において,当初計画では,スマートフォンを用いた操作インタフェース開発と検証実験のために,サーバPCの購入を計画していた.しかし,スマートフォンやタブレットは,個体差や利用できる通信環境に差が大きく,試作していたスマートフォンによる操作インタフェースよりも,物理的インタフェースを移動ロボット教材本体に設置する改造の方が,本研究の目的である「晴眼盲弱を区別しない」という観点で有利であるとの判断から,サーバPCの導入を見送り,小型キーボード(4x4キーパッド)といった電子部品の導入を優先した.平成30年度以降は,移動ロボット教材のファームウェアの追加開発とチューニング,ならびにロボットプログラミング以外のプログラミング環境(ファームウェア)の構築と検証を優先させるために,物品費により実験用教材を整備する.これにより,実験実施場所ごとにサーバPCを設置することなく,複数の場所(盲学校等)で並行して実験データを収集することが可能になる.
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