研究課題/領域番号 |
17K00997
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山田 健二 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50249778)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育教材 / 分析装置作り / X線光電子分光法 / ものづくり / 物理現象 |
研究実績の概要 |
本研究では、先端材料分析装置を用いた測定に終わることなく、分析装置作りにつながる教育展開を試みるものである。高専生や大学生の他に、小学生児童から学ぶことのできる教育教材を目指す。 初年度は小学生向けに「分析するとは何かを学ぶ教材」として、ミックスジュースを題材に果物の分量を変えて作り、果物の分量を予想させる出前授業を実施した。この内容は本校紀要にまとめた。中学生向けの教材としては、CDやDVD表面からの回折現象を利用した「簡易型分光器」を製作し実際に光を分光させる「ものづくり」を実施した。ブラッグの反射条件の式に三角関数が登場するので、このsinを分かりやすく学ぶ教材を準備し、中学生に実践できた。これらの応用例として実際にX線光電子分光法や表面材料分析装置を中学生に紹介できた。 高専・大学生向けの教材として「膜厚測定」の実験を行った。膜厚は電子デバイス分野で電気的特性を決める重要な要因に位置づけられる。今回はアルカリ金属のセシウムの蒸着回数に伴う膜厚変化測定を行った。水晶振動子による膜厚測定方法は、薄膜の材料が堆積することで振動子の固有振動数が変化し、その変化が質量変化に伴うことを膜厚測定に応用したものである。波動方程式から出発し、物理現象を工学に応用した事例として学ぶことのできる教材に展開できた。 X線光電子分光装置を用いた薄膜表面の実験成果を国際会議で発表するとともに、これらの分析技術を学ぶことのできる教材開発も進め、国内の学会や展示会で紹介できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していたすべての計画を実施できたため、おおむね順調に進展していると評価できる。小学生向け教材については、実験方法やねらいを議論し、「分析」のキーワードをいかに理解させるかを工夫した。ミックスジュースの出前授業では、5・6年生児童を中心に4グループでアクティブラーニングの要素を取り入れて実施できた。また中学生向け教材については、高校生で学ぶ三角関数のsinについて、実際に三角形を描いて、辺の比を計算し分度器で角度を求め、関数電卓を使って辺の比が一致する経験をさせることができた。中学1年生が6名で、中学3年生が1名の計7名の参加人数であった。中学3年生からの感想で、「三角形の相似の内容が三角関数で出てきたので今後も勉強をしっかりやっていきたい」とあった。図形の相似が三角関数を学ぶ際に関係していることに気づくことができた。物理現象を応用した事例として膜厚測定教材も実施したほか、実際にX線光電子分光装置によるダイヤモンドライクカーボン膜の分析を実施できた。以上の成果を国内外の学会等で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
高専・大学生向けの教材として、ヘリウムイオンを用いたビーム源と電子増倍管を用いた検出器を実際に製作できる教材を準備する。これは真空装置内に設置して利用するものである。データ処理にはパソコンが用いられるので、この処理方法についても議論する。マイコンを用いた計測システムを構築する。検出される物理量はアナログ量であるが、これをディジタルに変換して処理がなされる。Web教材として例えば、ディジタル回路や物理を学ぶことのできるコンテンツを準備し、分析装置を総合的に学ぶことのできる教材の体系化を目指す。ビデオ映像を利用することで視覚的な理解を促し、選択式問題によって繰返し学習から知識の定着が図られるシステムとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね使用計画通りに支出して生じたものであり、研究計画上、特に影響はない。次年度の教材づくりで試作品材料などの購入費使用計画に合わせて支出する。
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