研究課題/領域番号 |
17K01008
|
研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
清水 暁生 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (90609885)
|
研究分担者 |
石川 洋平 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (50435476)
深井 澄夫 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (30189906)
淡野 公一 宮崎大学, 工学部, 教授 (50260740)
中武 繁寿 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (10282831)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アナログLSI / 演算増幅器 / CMOS / 工学教育 |
研究実績の概要 |
小中学生を対象としたアナログLSI設計教育の実現に向けて,2018年度までに設計環境と講座実施環境を整備した。本年度は,整備した環境を用いて小中学生向けアナログLSI設計講座の実施を目標に活動した。 設計環境と評価環境を最適化するために,小中学生が3時間程度でオペアンプを設計し,2時間程度で設計したオペアンプを評価するための環境を構築した。オペアンプを3つのブロックに分け,それぞれのブロックを事前に用意し,受講者はそのブロックを接続することでオペアンプを設計できる。また,アナログLSI設計においてはレイアウト作業の難易度が高いが,各ブロックのレイアウトを用意し,レイヤー構造を理解していなくても作業できるレイアウト構造を提案した(IEEE ISCAS2019で報告)。本講座では「アナログLSI設計を体験する」という目的に特化させるため,オペアンプの動作原理などの説明は可能な限り省略した。また,LSIの試作は2,3ヶ月かかるため,受講生が設計するオペアンプを事前に試作しておき,講座では事前に試作したオペアンプを評価させる。小中学生でもオペアンプを評価できるようにオーディオアンプ用の外部回路を作成しておき,その外部回路の試作アンプを接続して音で性能を評価する。 2019年9月に小学5年生から中学3年生までの計17名がアナログLSI設計講座に参加した。アナログLSI設計では回路図作成,シミュレーション,レイアウトを3時間で実施することができた。また,事前に試作しておいたオペアンプを受講生が30分程度で評価することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アナログLSI設計環境の構築では,回路ブロックの開発,レイアウト手法の提案,回路評価方法の提案を行った。 回路ブロックの開発では,オペアンプに必要なバイアス回路,差動増幅回路,出力バッファ回路を設計した。出力バッファ回路については音質の違いを確認できるようにA級,B級,AB級のバッファ回路を用意し,共通のバイアス回路および差動増幅回路で動作するように設定した。レイアウト手法については,受講者が最上位層の配線だけで各ブロックを接続できるような構造を提案した。従来のレイアウト手法ではLSIのレイヤー構造が理解できていなければレイアウトできなかったが,提案手法によりこの問題が解決され,小学生であってもレイアウト作業ができるようになった。回路評価については,設計したオペアンプをオーディオアンプとして動作させるための外部回路を製作し,受講者が簡単に評価できるように工夫した。外部回路は,乾電池を用いて±2.5 Vの電圧を生成する電源回路と,非反転増幅回路であり,一つの基板上に製作した。製作した基板からオペアンプに接続するための色分けされた配線を出しておき,受講者は配線の色を確認しながらオペアンプが配置された基板に配線を接続する。また,オシロスコープなどの装置を使用した評価は難易度が高いため,受講者は回路構成による音の違いを確認した。 2019年度の目標は小中学生向け講座の実施であり,上記の工夫により制限時間5時間以内で回路設計から評価までを行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年の講座において,配線接続ミスによってチップを破損する問題が生じた。今後は保護回路などを検討し,小中学生が扱いやすいチップを開発する。また,試作できる回路の種類が少ないため,バイオセンサなどの今後身近になると予想されるデバイスを試作できるように回路ブロックを開発する。また,2020年度の目標は,小中学生向け講座の定期的な実施と周辺地域への展開である。新型コロナウイルスの影響があるため講座を実施できるか不透明であるが,既に実施しているオンライン授業の環境を利用した新しい形の講座を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では講座でICチップを試作する予定であったが、回路ブロック開発に使用したICチップを講座で再利用することができ、試作回数を減らすことができた。また、成果報告で国際学会を予定していたが、国内で開催されたため旅費を抑えることができた。 講座を実施することで開発したICチップの問題点が明らかになった。この問題を解決するための回路開発のためにこの次年度使用額を使用する予定である。
|