研究課題/領域番号 |
17K01008
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
清水 暁生 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (90609885)
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研究分担者 |
石川 洋平 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (50435476)
深井 澄夫 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (30189906)
淡野 公一 宮崎大学, 工学部, 教授 (50260740)
中武 繁寿 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (10282831)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アナログLSI / 演算増幅器 / CMOS / 工学教育 |
研究実績の概要 |
小中学生を対象としたアナログLSI設計教育の実現に向けて,2019年度までに設計環境と講座実施環境を整備し,小中学生を対象とした講座を実施した。本年度は,2019年度の講座で明らかになった問題点を解決し,さらに新しい回路ブロックを追加することを目標に活動した。 2019年度の講座において,小中学生は集積回路の設計作業を楽しむことができるが,設定ファイルの読み込みなど設計とは直接関係のない操作で手間取ることがわかった。そこで,講座用にすべての設定ファイルを自動で読み込める環境を構築し,受講者が回路設計に集中できる環境づくりを行った。2020年度に実施した講座では,2019年度と同様に3つの回路ブロックを接続してオペアンプの設計を行った。ただし,講座の実施時間は3時間であり,2019年度の半分の時間となったが,設定ファイルの読み込みなど無駄な作業を省くことができたため,回路図作成からレイアウトまで約2時間で終えることができた。また,試作したオペアンプを使って音楽を聴き,回路による音の違いも確認することができた。さらに,パッケージングされる前の集積回路を顕微鏡で確認し,受講者は試作したオペアンプの小ささを感じることができた。 また,オペアンプの入力電圧範囲を広げて応用回路を増やすために,Rail-to-Rail差動入力段を講座用に開発した(2020年電気学会電子回路研究会にて報告)。このRail-to-Rail差動入力段は従来の回路ブロックと接続することができ,過去の資産を生かして新しい回路を設計できる環境を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は構築したアナログLSI設計教育システムを他大学へ展開し,実施する予定であったが,COVID-19の影響で実現できなかった。そこで,回路ブロックの充実と設計作業環境の改善を行った。また,配線接続ミスによるチップ破損の問題を解決するための保護回路を検討した。 回路ブロックの開発では,オペアンプの入力電圧範囲を広げるために,Rail-to-Rail差動入力段を開発した。本教育システムでは設計したオペアンプをスピーカーに接続したときにその音の違いがわかるように,A級,B級,AB級出力バッファを差動入力段に接続する。本研究で提案したRail-to-Rail差動入力段はこれらの出力バッファに直接接続することができ,従来のオペアンプの差動入力段と入れ替えるだけでオペアンプの入力電圧範囲を拡大することができる。 設計作業環境の改善では,LSI設計に必要なルールファイルなどの場所を設定する作業を省略できるような環境を構築した。従来はファイルの設定などで1時間くらい要していたが,その時間を短縮できるようになった。この環境を用いて,小中学生対象のアナログLSI設計講座を実施した。その結果,2時間程度でオペアンプを設計することができ,実験まで含めて3時間で講座を実施することができた。 保護回路については,ICチップ内の電源間にダイオードを接続し,電源が逆につながっても回路に逆の電圧が加わらないような構造を作った。今回の講座では配線ミスが起きなかったため,保護回路の効果を確かめることができなかったが,今後は実験を通してその効果を確認する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の講座では保護回路の効果を確認することができなかった。今後は2021年度の講座に向けて保護回路の効果を実験を通して確認する。また,過去2回の講座で子供たちが回路図作成やレイアウト作業を楽しんでいる一方で,シミュレーションの設定やレイアウトチェックなどの作業を苦痛に感じていることがわかった。今後はこれらの作業をできるだけ自動化し,設計作業に集中できるような教育システムの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により,アナログLSI設計講座の実施とICチップ試作の回数が予定より減ったため。
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