本研究は、数学・理科・情報の教科書と学習指導要領に出現する科学用語を基本にして、科学用語の共起ネットワークを作成し、このネットワークと多種多様なテキストデータとの関連分析を行い、科学用語からみた科学教育の構造を把握し、科学教育の指導・学習に貢献する知見を明らかにすることである。最終年度は、日本の高校の数学、物理、化学、生物、地学、情報の教科書の索引から科学用語を収集し、様々な分析を行った。収集した科学用語の総数は5800件である。 15年前と現在の科学用語数を比較すると、数学、物理、化学、生物、地学、情報の科学用語数は、15年前と比べて全体で増えている。減少しているのは地学と情報である。増加の割合が大きい教科は、数学80%増、化学75%増、生物64%増である。2011年の学習指導要領の改訂によって、履修時間の増加、それに伴う教科書の質・量の充実が起因していると考えられる。 複数教科に出現する科学用語は「元素、原子核、半減期、陽子、電子、化学燃料、窒素、周期、電磁波」の9件である。 15年前と比べて、新しい科学用語が多い(新出の割合が多い)教科は、生物、化学、数学である。15年前の科学用語が現在使われていない(消失の割合が多い)教科は、情報、地学である。15年前と現在を比較して、同じ科学用語が多い(既出の割合が多い)教科は、数学、物理、化学である。 今回の分析に使用した教科書は各教科1社であるが、複数の教科書で分析することが望ましい。2020年の学習指導要領の改訂によって、2020年以降の教科書が全面改訂される。現在の教科書から消失する科学用語、2020年以降の教科書に新出する科学用語について、本稿と同様な分析を試み、科学用語の変遷を詳細に明らかにすることが今後の課題である。
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