新しい生物電子顕微鏡技法により得られた画像を用いて、様々な植物組織細胞のつくりとはたらきの理解を促すことのできる教材画像集の作成を目指した。これまで蓄積してきた白黒の電子顕微鏡画像に光学顕微鏡から得た自然な色を重ねる方法により植物細胞のつくりの特徴を分かりやすく示すことが可能となった。「キク科植物の集合花を構成する個々の舌状花と筒状花のつくりや受粉の様子、めしべの柱頭で花粉管が伸長する様子」「頂端や葉腋に存在する分裂組織の様子とそれが花芽へと分化する様子」「マメ科植物の根粒細胞が根粒菌との共生関係を確立して、相互に利益をもたらしつつ機能する様子」「茎や葉、花、果実の色を作り出す細胞内構造」「絶滅危惧水生食虫植物ムジナモの獲物の捕獲と消化の仕組み」「ムジナモの開花と受粉、花粉管伸長の仕組み」などについてまとめることができた。また、平面的な2次元の画像情報を立体的に表現する方法について検討を進め、安価なVRメガネを利用するなど、だれでも容易に立体視できる方法を改良した。 さらに今年度は作成した画像集を出前授業などを通して児童・生徒・学生に紹介する機会を多数設けることができた。植物細胞のはたらきをイメージすることのできるわかりやすい画像は好評であり、多くの児童・生徒・学生に興味を持ってもらうことができた。児童・生徒・学生の反応をもとに画像の提示の仕方や説明などに改良を加えることを繰り返し、より完成度の高い画像集となった。また作成した画像集をホームページで紹介したところ、科学番組や図鑑の製作関係者から、画像に関する問い合わせを複数回受けたことからも、画像集が広く活用されていることが確認できた。
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