最終年度は、ILCと地域コミュニケーションの問題点を整理し、歴史的に位置づける考察を行った。2015年度、2018年度、2019年度に取得した岩手県を含む日本の4つの地域で、認知度および議論する論点をまとめた。認知度は誘致候補地である岩手県で高く、他の地域では低いことがわかった。誘致活動が地域と密着して展開して行われている証でもあり、地域ではなく国として大型科学を誘致する際には問題が残る。全国的な認知度の上昇が必要である。 また誘致にあたってもっとも議論すべき論点は、どの地域でも、予算の国際分担がもっとも重要であると認知された。さらに次に、科学的重要性が選ばれた。岩手県でさえ、地域の経済活性よりも、予算の国際分担と科学的重要性が上位に選ばれたことに注目する必要がある。 今年度はこうしたデータを踏まえて、大きな流れとして、3.11の後の岩手県の復興予算にILCが挙げられたこと、ILCが地域経済を活性するプロジェクトと地元では認知されているが全国的には知られていないことの問題点を整理した。国際的には、SSCの際の技術競争などの要素がILCの場合はないことにも注目をした。 TeV領域の物理学は子エネルギー物理の将来計画として必要であるが、安全保障等の政治性を持たない基礎科学のプロジェクトとしては破格の予算であり、日本学術会議にも支持をされない現状を考えれば、さらに長い時間が必要となる。研究のまとめとして、ILC推進をする物理学者は、地域に期待を持たせすぎず、全国的に認知を挙げる必要がある、さらに科学的価値が予算に見合うと他分野の研究者にも認められる努力をすべきであるし、そうでなければ他の道を探す必要もあるかもしれないとした。
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