理科学習では、学習者の誤った既有知識に対して反証例を提示し、概念的葛藤を起こさせる教授法が有効だとされている。また、学習者の持つ誤った既有知識が強固である方が新情報(科学的概念)に接した後に修正されやすいことも指摘されている。学習者の持つ誤った様々な概念の堅固性・回答の一貫性を学年進行で把握し、それを各学校種の授業改善に活用するため、これまでに小学生から大学生を対象にして行った質問紙調査の結果を「回答の一貫性」に着目して分析し直した。結果、例えば、小学校第4学年で学ぶ単純回路の電流と乾電池のつなぎ方については、学校種が上がるほど、誤った考え方の多様性が減少していくとともに一貫性のある考え方をする割合が上がり、正答率も上がる傾向が見られた。しかし、単純回路の電流保存の法則に関して大学生でも負荷が違うだけで正答できなくなる場合があり、小学校第4学年の学習内容を真に理解できていない実態があった。誤った考えを持っていることに気付かせるには、電流計を2つ用意して負荷の前後の電流の向きと大きさを同時に確認させ、加えて負荷を変えて繰り返し確認させる必要がある。乾電池の直列・並列つなぎに関しても、主な誤答パターンが3つあり、理系学部生でも強固に保持される誤答を把握できた。誤った考え方を持っていることに気付かせるには、電圧が電位差であり、電位差がなければ電流が流れないが電位差があれば電流が流れることを複数の定性実験を順次性を考えて示す必要がある。これらを踏まえ、誤概念を解消させる目的で実験パッケージを検討し、教員養成系学部の理科専攻の学生を対象に実践した。このとき、実験パッケージのみの有効性を確認するため、学生同士の話し合いは一切無しとした結果、期待したようには正答率が上がらず、概念転換には、学生同士や学生と授業者による社会的相互過程も合わせて考慮していく必要があることが確認できた。
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