研究課題/領域番号 |
17K01024
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
松森 靖夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40240866)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教師教育 / 理科教育 / 教員志望学生 |
研究実績の概要 |
平成30年度の目的である,理科内容に対する小学校教員志望学生の誤概念の実態について調査し,詳細なデータを収集して,その諸特徴について明らかにした。その一端を下記①~③の当該学会における口頭発表や,④の学術論文として公表した。 ①塚原健将,佐々木智謙,佐藤寛之,松森靖夫「ヒトの循環系に関する小学校教員志望学生の認識状態の分析(その1)」日本理科教育学会第68回全国大会(岩手大会),『日本理科教育学会全国大会発表論文集』に所収,2018.【要旨】動脈と静脈の双方の概念規定について,科学的理解を把持している小学校教員志望学生は,約30%に止まり,その低い認識状態が露呈した。 ②佐々木智謙,塚原健将,佐藤寛之,松森靖夫「ヒトの循環系に関する小学校教員志望学生の認識状態の分析(その2)」日本理科教育学会第68回全国大会(岩手大会),『日本理科教育学会全国大会発表論文集』に所収,2018.【要旨】ヒトの心臓や心臓に連結する血管を流れる血液の性質に関して,約50%の小学校教員志望学生が非科学的な認識を有していることが判明した。 ③中西大生,佐藤寛之,佐々木智謙,松森靖夫「リトマス紙の論理操作に対する小学校教員志望学生の認識状態の分析」日本理科教育学会第57回関東支部大会(宇都宮大会)『日本理科教育学会第57回関東支部大会研究発表要旨集』に所収,2018.【要旨】小学校教 員志望学生であっても,リトマス紙の論理操作を科学的に認識できている者は10%程度であることが判明した。 ④松森靖夫,佃俊明,中西大生「小・中学校理科教員養成の現状と課題-山梨大学を事例にして-」日本化学会誌『化学と教育』 第67巻,第3号,106-109頁.【要約】化学に対する小・中学校教員志望学生の低い認識状態にも触れながら,教員養成系学部の化学教育のあり方についても言及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究目的である,学力診断用データベース構築に不可欠な小学校教員志望学生が有する自然事象に関する誤概念調査を行い,その諸特徴の分析や類型化を行うことができた。概して,小学校教員志望学生の理科学力が極めて低いことや,小学校理科の内容であっても,誤概念を抱いている学生が相当数に及ぶことも明らかになった。また,本年度に得られた研究成果の一端を,日本理科教育学会『全国大会発表論文集』や同学会関東支部大会『発表論文集』へ掲載したり,日本化学会誌『化学と教育』に掲載したりする中で,一定の評価を得てきた。 まず,日本理科教育学会第68回全国大会(2018年開催,岩手大会)では,動脈と静脈の概念規定に関する低い認識状態や,動脈血と静脈血に関する小学校教員志望学生の低い認識状態について口頭発表した。また,同学会第57回関東支部大会(宇都宮大会)では,小学校教員志望学生であっても,水溶液の性質を同定する際に用いられるリトマス紙の論理操作を,科学的に認識できている者は僅少であることを報告した。 さらに,日本化学会誌『化学と教育』の掲載論文では,山梨大学教育学部を事例にして,化学に対する学生の理解の調査結果にも触れながら,学部の化学教育のあり方についても言及した。具体的には,教員養成系学部における化学教育カリキュラムの再編,小学校教員志望学生の学習履歴を踏まえた化学教育の提案を行った。 なお,時間的制約等から,小学校理科の特定の単元に対する小学校教員志望学生の誤概念を把握するにとどまった。さらに,誤概念の抽出と把握に努める必要もあり,自己点検による評価を,(2)おおむね順調に進展している,と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究の目的であった,小学校教員志望学生が保持する誤概念の調査を継続的に遂行していくと同時に,以下に示す平成31~32年度の各研究目的の達成を目指して,今後の研究を推進していく予定である。 【平成31年度】平成29年度,及び平成30年度の研究によって得られた小学校教員志望学生の自然事象に関わる誤概念を科学概念へと変容・再構成する目的で,データベースを試作する。①エネルギー概念(エネルギーの見方・エネルギーの変換と保存・エネルギー資源の有効利用等),② 粒子概念(粒子の存在・粒子の結合・粒子の保存性・粒子の持つエネルギー等),③生命概念(生物の構造と機能・生物の多様性と共通性・生命の連続性・生物と環境とのかかわり等),及び④地球概念(地球の内部・地球 の表面・地球の周辺等)の計4つのカテゴリーで構成されるデータベースの試作である。具体的な手順は,仮称「小学校教員志望学生の理科学力診断用データベース」の試作→データベースの内容・構成等に対する妥当性・信頼性についての有識者からの意見聴取→データベースの再構成→小学校教員志望学生によるデータベスの試行,という一連の計画に沿い研究を進める。 【平成32年度】 最終年度においては,平成 31 年度に確定したデータベース」の実際的運用を遂行する。また,本データベースは4つのカテゴリー(①エネルギー概念,②粒子概念,③生命概念,及び④地球概念)からなるため,各カテゴリーごとに運用する.並行して,本データベースの利用前後の小学校教員志望学生の変容様態についても評価し分析する。具体的には,平成31年度に確定したデータベースを,山梨大学を含む全国の教員養成学部において実際に運用→データベースに取り組む前後の小学校教員志望学生の変容様態の把握→データベースの有効性の評価と分析,という一連の計画に沿い研究を進める。
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