研究課題/領域番号 |
17K01026
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加納 安彦 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (50252292)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 疑似科学 / コ・メディカル / リテラシー |
研究実績の概要 |
科学的な内容を装いながらその実体のない商品の宣伝が後を絶たず、この中には健康の増進や疾患の予防を謳った食品も少なくない。本研究では、日常的な宣伝の実態を把握するとともに、一般市民と医療関係者の意識を調査して実態を明らかにする。さらに、医療従事者養成校の学生を対象にして、どのように正しい知識に基づくリテラシーが形成されていくのかを検討する。初年度である2017年度は以下のような成果を得られた。 1)2紙の日刊新聞掲載広告ならびに折り込み広告を対象として、疑似科学的な内容を含んだ広告を1年にわたり抽出・整理した。これらの中には中高年を意識した宣伝が多いことが特徴であり、機能性表示食品や特定保健用食品の広告も多く掲載されていた。また、年度半ばまでの集計・解析結果を基に、以下の市民や医療従事者に対する意識調査の設問を作成した。 2)2018年2月にインターネットアンケートによって市民10,000人を対象に、健康食品やその疑似科学的宣伝がどの程度浸透しているかを調査した。テレビCMやインターネットを介して情報を得ている割合が高く、多くの疑似科学的宣伝が深く浸透していることが明らかとなった。 3)上記のアンケート調査の回答者から医療従事者を抽出し、さらに詳細な設問による調査を実施した。医療従事者といえども疑似科学的宣伝の影響を受けていることが明らかとなった。 4)愛知県並びに岐阜県下の医療従事者養成校に呼びかけ、合わせて13校・学科から協力を得られることになった。4月に簡単な質問で予備的に調査し、その後、2月に卒業生に対して、一般市民並びに医療従事者向けのインターネットアンケートと同様の質問項目でアンケート調査を実施した。テレビCMやインターネットを介して情報を得ている点で共通し、また、多くの疑似科学的宣伝が深く浸透していることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年5月以降、2紙の日刊新聞掲載広告ならびに折り込み広告を対象として、疑似科学的な内容を含んだ広告を抽出・整理した。広告の掲載内容にも季節性があるため、1年を通じてまとめることができ、宣伝のための手法など詳細な検討のための準備が整った。第2年度以降も継続して実施するが、学会での発表にむけてまとめていくことができる状態である。 さらに、インターネットアンケート(マイボイスコム社に依頼)によって、一般市民約10,000人を対象としたアンケートを実施し、結果を得られた。これらの内、約500人の医療従事者を対象にさらに質問し、回答を得ることができた。費用の都合上、質問項目が限定されたが、広く知られている疑似科学的宣伝の浸透具合を把握することがで、さらに、医療従事者養成校での調査結果との間で比較するデータが得られた。 第2年度に向けて愛知県並びに岐阜県下の多くの医療従事者養成校に呼びかけ、看護師養成校7校、理学療法士養成校3校、鍼灸師養成校2校、柔道整復師養成校1校(学生数の合計は約1,600名)から協力を得られることができ、2018年度以降の準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を生かし、第2、3年度には以下のように研究を進める予定である。 1)初年度に継続して、日刊新聞の掲載広告並びに折り込み広告を収集し、その内容分析し、広く宣伝されている商品の種類や会社、宣伝のための手法(キャッチコピーやセールスポイントなど)の共通点などを明らかにする。 2)初年度に実施したインターネットアンケート結果を踏まえて、医療従事者が市民の持っている意識や知識の正確性についてどのように考えているのかを検討する。また、さらに詳細な調査が必要が否かを検討する。 3)医療従事者養成校での知識の正確性と意識の変化などを問うアンケート調査を継続して実施する。特に、学生の意識変化を追跡するために、2年次学年末と3年次学年末(または卒業時)にも同様のアンケートを実施し、入学時の意識がどの時点で変化したかも調査する。一般市民並びに医療従事者を対象とした調査結果と比較し、教育の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に広告の抽出・整理のためにドキュメントスキャナーの購入を予定していたが、研究室にすでに備えている機器で代用することができた。また、インターネット調査委託費用が当初の予定よりも安価であったため、初年度助成額の内から次年度使用額が生じた。第2年度では以下のように使用する予定である。 1)初年度が順調に進んだため、成果発表やさらなる情報収集の機会を得るため、国内学会への出席を3回から5回に増やす。 2)医療従事者養成校での学生を対象としたアンケートに対して、予想よりも多くの協力を得ることができた。このため、アンケートの集計に時間がかかると予想され、技術補佐員の勤務時間をこれまでよりも延長する。 3)アンケート協力校への結果報告のために会議を招集する予定であったが、全体会議の実施が困難であるため各校ごとに報告会を実施する。このための会議費や出張旅費が必要である。
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