人体や健康、医療に関する疑似科学的な言説は、医療従事者やそれらをめざす学生にも浸透していると考えられる。 1)愛知県並びに岐阜県下の医療従事者養成校の合わせて13校・学科(看護師養成校7校、理学療法士養成校3校、鍼灸師養成校2校、柔道整復師養成校1校)の協力を得て、2018年4月入学生に対して、入学時から年度初めと2020年3月の卒業時まで、継続的にアンケート調査を実施した。対象とした学生数は約500名であった。ただし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴った休校措置などのために、いくつかの学校・学科では協力してもらえずアンケートの回収数にばらつきがあった。すべての校種に共通して、多くの疑似科学的宣伝が学生の中に深く浸透していることが明らかとなった。質問ごとに学年進行に伴う変化を観察すると、意識が変化する内容もあり、教育の成果であると考えられる。その一方で、学年進行によっても全く変化しない内容もあり、基礎医学教育の問題点として検討していく必要がある。 2)医療従事者を対象とした疑似科学に関するアウトリーチ活動として、セミナー(「臨床のための生理学講座」)を継続して実施した。2020年度は脂質について生化学的な基本知識を整理するとともに、コレステロール、脂肪酸、トランス脂肪酸についての誤った言説のほか、摂取量と健康のかかわりなどについてエビデンスに基づいて詳細に解説した。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、さまざまな疑似科学的な言説も流布されたため、空間除菌剤やサプリメントなど、その効果の根拠が明確でない商品についても随時取りあげた。新型コロナウイルス感染の拡大のために、予定よりも少ない5回の実施にとどまったが、すべてをオンライ形式でおこなった。
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