本研究の目的は、「健康情報」を題材とした科学リテラシー教育を、中学校・高等学校における保健教育の枠組みの中で行うことができる実践的なカリキュラムを開発することであった。 2017年度は、健康情報に対する批判的リテラシーの概念を取り入れた、日本国内の主に中高生~大学生で実施可能なレベルの「健康情報判断力テスト」の開発を試みた。また、健康情報が含まれるテレビ映像の教材化の一環として、さまざまなジャンルの映像のHDDレコーダーに蓄積し、これらを数分程度の映像に切り取ることで、保健学習の授業で利用可能かどうかを検証した。さらに、そのうちのいくつかを利用して健康情報の見方を学ぶ保健教育実践を中学校で実施した。 2018年度は、2017年度に実施した中学校での授業の成果を関連学会で発表した。また、健康情報の「根拠」の可視化に焦点を絞って実施した健康情報の判断力を育成する「保健教育」の実践を論文としてまとめた。 最終年度である2019年度では、2017年度に実施した中学校での授業方法の違いに焦点をあてて、「健康情報の見方」と教えるタイミングとその効果の違いについての分析を行い、その成果を学会誌に投稿し掲載された。また、授業開発に関する今後の課題となると思われる「情報処理スタイル」や「情報処理の直感性」の違いが健康情報の「判断」にあてる影響についての分析を中学生を対象とした調査から行い、今後開発すべき「健康情報リテラシー教育」の方向性を検討した。
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