研究課題/領域番号 |
17K01037
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渡邉 重義 熊本大学, 教育学部, 准教授 (00230962)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カリキュラム・マネジメント / 授業実践 / 学習のつながり / 知識の活用 / 教師の応答 / 表現方法と用語 |
研究実績の概要 |
初年度の研究ではカリキュラム・マネジメントに関する①学習プロセスの分析と②理科カリキュラムに関係する授業要素の抽出および③環境教育に取り組んだ中学校3年間の実践の分析を行った。 ①については、学校現場の事情によって、当初予定していた単元での授業実践記録の収集と分析が実施できなかったが、小学3年「昆虫の育ち」,小学4年「自然の中の水」,小学4年「閉じ込めた空気と水」,小学6年「てこのはたらき」,中学3年「化学変化とイオン」,中学3年「自然界のつながり」の授業実践を分析し,「トライ・アンド・エラーの経験」「図や数値を用いた説明」「モデル作成における思考と交流活動」等の視点を抽出した。また,「昆虫の育ち」については、韓国と日本の教科書の記載内容や実践の比較を行い、カリキュラム構成に関する観点の違いを明らかにした。 ②については、小学校教員に対してカリキュラム・マネジメントに関するアンケート調査を行った。まだ、予備調査の段階ではあるが、理科に関心のあるベテランの教員は、単元内や単元間の学習のつながりを意識した取り組みを行っていると意識している傾向があることがわかった。その具体的な取り組みや理科の授業経験の少ない教員の取り組みについては次の調査課題になる。また、理科授業記録の分析から、「既習の知識を利用した実験方法の計画」「事象の表現方法と用語」「学習者の考えに対する教師の応答」「ものづくりのためのスキル」等が学習内容をつなぐ鍵になることがわかった。 ③は、本年度当初の計画にはなかったものであるが、中学校3年間の環境教育の取り組みにおいて、理科との関連づけを行った実践記録を題材として、カリキュラムの設計と実践に携わった教員とともに分析を行い、環境教育の意識を3年間継続するためのカリキュラム構想や授業構想を行うためのポイントを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、学会の全国大会および研究会の実行委員長を務めるなど、研究外の仕事に多大な時間を割かれることが多く、さらに共同研究者として参画している別の研究が採択されて、本格的な実施が始まったこともあり、本研究において学校現場と連携をとりながら、計画的に実践事例を記録・分析することができなかった。実践事例の収集に系統性がなかったことが一番の反省点であり、期待していた成果につながらなかった原因になっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って、2年目は抽出したカリキュラム・マネジメントに関連する要素を用いたカリキュラム・デザインの方策を提案することを目指して、1年目に不十分であった授業実践事例の系統的な収集と分析を行うとともに、抽出した要素の整理や類型化を行う。要素の抽出では、授業を実践した教員へのインタビューも行い、学習指導案やVTR等の授業記録の裏にある教員の意図や学習者の実態を明らかにする。そして、それらの分析結果を生かして、学校や地域の実態に応じた多様なカリキュラム・マネジメントに結び付けるための方策を吟味する。さらに、理科に関連したカリキュラム・マネジメントの視点と方法を現職の教員に提示し、実際のカリキュラム・デザインやリフォームに向けての課題を見出す。 なお、カリキュラム・マネジメントの視点と方法を具体化するなかで、熊本地震の被災地であること、教員や学習者が大地震を経験していること等の背景がある地域において、防災教育等の視点を取り入れたカリキュラム・デザイン、教材研究、学習構想に、現職教員と共同で取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、平成29年11月に日本科学教育学会の第2回研究会を熊本大学で開催し、平成30年1月には日本生物教育学会の全国大会を熊本大会を開催し、いずれも大会実行委員長として準備・運営に時間を割かれたため、必要な物品を購入しての研究が滞り、予算の計画的な執行が行えなかった。また、研究発表報告等に予定していあ出張旅費は、いずれも研究代表者の所属する大学で研究会や全国大会が行われたことにより、それを目的とした支出が無くなった。なお、日本生物教育学会の全国大会は、本来は平成28年度に開催する予定であったが、熊本地震の影響で急きょ延期して開催することになったため、当初の研究計画の予定に影響を及ぼすことになった。
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