研究課題/領域番号 |
17K01038
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
比嘉 俊 琉球大学, 教育学研究科, 准教授 (30780390)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外来生物 / 持続可能社会 / 学校教育 |
研究実績の概要 |
小学校から高等学校の検定教科書(生活科,理科)において外来生物の記載について確認したところ,小学校生活科と小学校理科では外来生物の説明についてはなかったが,生き物を放置しない等の外来生物の予防に関する記載はあった。中学校理科と高等学校生物基礎・生物の教科書には外来生物についての説明や探求学習の題材などとして取り上げられていた。併せて,学習指導要領とその解説を俯瞰すると,小学校生活科・理科では,外来生物の取り扱いについて記載はなかった。他方,中学校理科では,学習指導要領・解説の両者において,外来生物を扱うとあった。高等学校理科では,学習指導要領での記載はなかったが,解説には外来生物を扱うとされていた。 小学校2校で在来のメダカと外来のグッピーを教材とした授業を行なった。その結果,生き物の放逐が悪影響を与えることを理解した。グッピーという具体例から,生き物の放逐の悪影響の一般論について言及することができた学校がある一方,教材であるメダカとグッピーの具体例の枠内のコメントにとどまった学校もあった。今後,児童が具体物から一般論へ移行できなかった原因や授業方法の検討が必要である。 同じ学校の同学年,外来生物の授業をした学級とそうでない学級の中学生に,「外来生物を悪者と思いますか」という質問に対し,「そう思う」「そう思わない」「どちらとも言えない」の3択で回答してもらった。外来生物の授業学級では,「そう思わない」が一番多かったが,選択肢に有意差はなかった。他方,非授業学級では,「どちらとも言えない」が「そう思う」「そう思わない」より有意に多かった。また,その理由の半数は外来生物の知識が少なく,判断できないとの旨の回答であった。これらのことから,外来生物を教材とした授業で,生徒は外来生物についての知識を持ち,この知識を活用し,設問に回答している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖縄島や西表島での生物調査から学校で使用可能な外来生物の教材は作成できた。 作成した教材を小学校・中学校で実際に試験運用し,開発した教材が児童生徒に与える影響をみ取ることができた。特に中学生では持続可能社会の概念の一部の形成につながったと考える。校種を超えた試行実践は計画予定より早い。 教科書・学習指導要領・学習指導要領解説を検討することにより,日本の公教育において,外来生物がどのように扱われているか把握できた。これにより,具体的な授業実践のみでなく,学習者の発達段階に応じた公教育における外来生物の扱いの広い枠での検討が可能になっった。海外との比較も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
授業実践の充実と開発した教材に対する児童生徒の変容のデータ収集をメインとする。 その前に,教材の充実を図るために,外来生物対策を担っている行政(沖縄県)と民間団体への聞き取り調査を行う。 授業実践では,児童生徒の到達目標を明確にし,それが達成できたかどうかのエビデンスを採る。 昨年度の成果発表は紙面発表(論文)より,学会での口頭発表が多かった。今年度は,紙面発表の方を多く行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,西表島調査を平成30年は行わなかった。平成30年度は沖縄島北部地域に重みを置いて外来生物の調査を行なったので,旅費の使用額がかなり少なかった。そこで,今年度は延期にしていた西表島での外来生物の調査を行い,その結果をまとめて西表島の学校で外来生物を使用した授業を行い,世界遺産登録を目指す地域の教育への還元を計画している。また,今年度は研究成果の紙面発表を計画しているので,助成の一部を論文別刷に充てる。
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