研究課題/領域番号 |
17K01040
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
青山 美智代 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80264828)
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研究分担者 |
西薗 貞子 梅花女子大学, 看護保健学部, 准教授 (50458014)
勝井 伸子 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90290436)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 看護過程 / 米国看護理論 / 文化的歴史的コンテクスト / 看護アセスメント / わかりにくさ / シラバス / インタビュー / IBL |
研究実績の概要 |
看護過程の展開に関する授業展開を正確に掴むため、2018年10月時点の全看護系大学277大学の内、看護過程の展開に関する科目のシラバスがWEB公開されていた255大学のシラバスを検索・収集・分析した。分析項目は、科目名、配当年次、単位と時間数とした。看護過程には標準的な教科書がないものの、看護過程が米国から我が国に導入された30年以上の経験に基づいた授業計画の共通性があると考えられたが、一様ではなかった。この調査結果は、論文として発表した。さらに、看護教育におけるIBLの意義について、文献検討し論文として発表した。 米国看護理論の生成に影響を与えたF・ナイチンゲールやV・ヘンダーソンが活躍した時代の医療事情、女性の社会化の視点から看護師に求められる価値観について、文献検討、情報収集を行った。 米国看護理論が日本へ導入されたことによって生じた問題を、看護教育の大学へのシフト、個人や自立の概念などに見られる文化的差異、日本とアメリカの看護、医療の構造的差異などの点から検討し、そうした事情が、翻訳された看護理論用語、看護診断ラベルなどの難解さ、看護の臨床との乖離や実感のなさにつながったのではないかという点を中心として知見をまとめ、あわせてテキスト頻出の米国看護理論周辺用語を抽出したリストを作成して、「アメリカ看護理論周辺用語のわかりにくさの解明(1)」と題する論文として発表した。 看護理論周辺用語の難解さと臨床看護との乖離の有無、活用実態を調査するために、前述のリストを用いて、臨床看護師に看護理論の理解と使用の実態に関するインタビューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
看護過程を活性化する教育プログラム開発のために、看護学士課程における教育プログラムの把握に着手している。全看護系大学277大学の内、看護過程の展開に関する科目のシラバスがWEB公開されていた255大学のシラバスを検索・収集し、科目名、配当年次、単位と時間数の傾向を分析した。看護過程の授業には標準的な教科書がないものの、看護過程が米国から我が国に導入された30年以上の経験に基づく授業計画の共通性があると考えられたが、科目名、単位と時間数は一様ではないことが明らかとなった。現行の教育プログラムの把握のためには、継続的な分析を進める必要性が明らかとなった。この成果は論文として発表した。さらに、看護教育におけるIBLの意義について、文献検討し論文として発表した。 研究手法としてインタビューを実施するため、混合研究法学会に参加して混合研究法、アクティブインタビュー等に関する情報収集を行った。 テキストに頻出する看護理論周辺用語から「わかりにくい、使いにくい看護用語、概念」27組のリストをインタビューガイドとして作成し、インタビュー調査について、奈良県立医科大学医の倫理審査委員会の許可を得て、臨床看護師6名を対象にインタビュー調査を実施した。 日本の看護教育の大学へのシフトに伴って「輸入」された看護理論では、個人、自立、個人差と周囲の配慮といった文化的信念に関わる概念の差異に基づいた修正を加えることがなく、日本とアメリカの看護の構造的差異、すなわち医師の所在の差異、チームナーシングと分業の考え方の差異なども組み込まなかったかったために、翻訳された看護理論用語、看護診断ラベルなどの学生、看護師にとっての難解さ、看護の臨床との乖離や実感のなさにつながったのではないかという点について、「アメリカ看護理論周辺用語のわかりにくさの解明(1)」と題する論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
看護過程を活性化する教育プログラム開発のために着手している、現行の看護学士課程の教育プログラムの把握を継続する予定である。具体的には、授業目標、時間数、看護理論の活用と看護診断の活用の有無についてデータ収集・分析を行い、看護過程展開の授業に関する全体像の記述を目指す。さらに、看護教育におけるIBLの意義について、新たに情報収集し検討を進める予定である。 すでに開始した「わかりにくい、使いにくい看護用語、概念」に関するインタビュー調査について、逐語録を作成して、分析し、臨床看護師の看護理論概念、用語の活用実態、わかりにくさ、使いにくさを明らかにしていくために、インタビュー調査は今年度中に10~12名をさらに募集して実施予定である。対象者は臨床経験4-5年から20年以上まで、さまざまな経験を持つ看護師とし、教育歴も専門学校から大学院修了者まで、職種も一般臨床看護師から認定看護師として専門領域を持つ看護師、保健師、看護教員まで幅広く対象とする予定である。 併せて、アメリカ看護理論成立の背景について、さらに広く情報収集を行い、19世紀末から20世紀前半における看護師の活動と看護教育、特にヘンダーソン看護理論の成立事情について知見を得る。併せて、日本に導入された看護教育を、アメリカからの宣教師が女子教育の一環として看護教育の創始者として関わったこととが日本の看護教育にどう影響を及ぼしているか、という点に注目して、明治以来の看護とキリスト教伝統との関わりを一つの視点として、新たに情報収集を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度3月にインタビュー調査を実施し、旅費などの費用が正確には事前に不明であったので、予算内に収まるように考えて行ったが、一部については、書類の処理が間に合わず、その分についてはやむなく自費で賄い、残額については次年度使用とせざるを得なかった。翌年度、物品費に充てる。
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