研究課題/領域番号 |
17K01040
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研究機関 | 梅花女子大学 |
研究代表者 |
青山 美智代 梅花女子大学, 看護保健学部, 准教授 (80264828)
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研究分担者 |
西薗 貞子 奈良学園大学, 保健医療学部, 教授 (50458014)
勝井 伸子 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90290436)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 看護過程 / 看護アセスメント / 看護理論用語 / インタビュー / 看護の世俗化 / 看護の職業化 |
研究実績の概要 |
1)看護過程に関するシラバス分析:看護大学シラバス(2018年度)における、看護過程科目の記述内容から、内容と位置付けについて、テキスト型データ解析ソフトWord Miner(日本電気計算株式会社)を用いて分析した。構成要素は類義語や言いかえが多く、出現数が多いのは、「看護」「過程」「患者・対象者・クライアント・対象」「基本・基礎・基本的・基礎的」「問題・課題・問題点」「展開」「事例・紙上・模擬・ペーパーペーシェント・紙面」「実践」「理解」「思考」「必要性・必要」「解決」「人・人々・人間・個人」「健康」「プロセス」であった。共通していたのは、専門職に必要な技術、科学的・系統的・具体的な思考の重視という位置づけ、事例を使う学習方法であったが、一方、科学的思考の具体的な意味は記述されていなかった。 2)米国看護理論の生成に影響を与えた医療事象の変遷:日本の看護教育ではほとんど教えられていないキリスト教看護修道女の活動と看護の世俗化、職業化のプロセスをまとめ、英米の看護にどのように影響を及ぼしたかをあと付け、米国看護理論成立の背景として理解できる資料を作成予定である。 中世から近代における修道院と看護の世俗化、職業化のプロセスを、フランスやイギリスを中心とした関連文献から検討した。修道女、または看護婦養成教育の選択の背景には、女性に結婚以外の生き方を開く意味が大きく、同時に、看護修道女と看護の世俗化は複雑な関係があったことを確認した。看護修道女の看護は、キリスト教の慈悲と救霊に基づく、他者に越境的に関わる行為である。看護修道女は、看護・医療の世俗化(非キリスト教化)プロセスに逆行すると批判されたが、民衆が自分の身体と健康を他者に委ねるという医療化プロセスを準備する上で重要な役割を果たしたことを確認した。 3)臨床看護師インタビューは逐語録を作成し、テキスト分析の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)看護過程に関するシラバス分析:シラバスをWEB公開している255大学の記述内容(「概要」、「目的」、「目的・目標」、「目標」、「内容」、「その他」)をテキストマイニング分析し、看護系大学が全体として看護過程教育でめざしている内容の共通性を把握し論文を作成した。共通して重要視された「科学的思考」は、その具体的な内容が全く記述されていなかった。本研究では、文脈の確認と、看護系大学が「科学的思考」を重視する意味や経緯の検討に至っていない。 2)米国看護理論の生成に影響を与えた医療事象の変遷:中世から近代における修道院と看護の世俗化、職業化のプロセスを、フランスやイギリスを中心とした関連文献を検討した。キリスト教の看護修道女の活動から看護の世俗化、職業化のプロセスをまとめて、それが英米の看護にどのように影響を及ぼしたかをあと付け、米国看護理論成立の背景として理解できる資料を講義資料として作成し、講義で使用したが、論文として発表には至っていない。原稿執筆中である。 3)臨床看護師インタビュー:臨床看護師インタビュー逐語録の分析準備はしているが、完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
1)看護過程に関するシラバス分析:2020年度の成果によれば、看護過程は、専門職としての看護師養成教育に必要な技術として、科学的・系統的・具体的な思考を教育する科目という位置づけが共通点であった。さらに、一見多様に分散しているように見える構成要素においても、類義語や言いかえが多く、内容的には広い分散はなかった。このことから、標準的な教育内容が記述され、科学的思考の重要性が共通した見解であることがわかった。しかし、科学的思考の具体的な意味は、シラバス上に記述されているとは言えなかった。2021年度は、文脈の確認と、看護系大学が「科学的思考」を重視する意味や経緯の検討を行う。 2)米国看護理論の生成に影響を与えた医療事象の変遷:中世から近代における修道院と看護の世俗化、職業化のプロセスを、フランスやイギリスを中心とした関連文献を検討した。キリスト教の看護修道女の活動から看護の世俗化、職業化のプロセスをまとめて、それが英米の看護にどのように影響を及ぼしたかをあと付け、米国看護理論成立の背景として理解できる資料を論文として作成し、あわせて他の看護大学でも使用できる講義資料として教材化の準備を行う。 3)臨床看護師インタビュー:臨床看護師インタビューの逐語録をデータ化してテキストマイニングによる分析を行い、看護診断を含めた看護理論用語の活用の実態と問題点を記述する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大により、予定していた研修・学会がオンライン開催となり、また研究打合せも電話等で行ったことにより旅費が発生しなかったことによる。 次年度は、キリスト教の看護修道女の活動から看護の世俗化、職業化のプロセスをまとめて、それが英米の看護にどのように影響を及ぼしたかをあと付け、米国看護理論成立の背景として理解できる資料を論文執筆と、他の看護大学でも使用できる講義資料として教材化の準備に充てる。また、臨床看護師インタビューのテキストマイニングによる分析にを行い、看護診断を含めた看護理論用語の活用の実態についての論文執筆に用いる。
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