研究課題/領域番号 |
17K01045
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大木 聖子 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40443337)
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研究分担者 |
厳 網林 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (10255573)
広田 すみれ 東京都市大学, メディア情報学部, 教授 (90279703)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不確実性 / 地震災害 / ステークホルダー / ナラティヴ / 実動訓練 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「今後30年の発生確率◯%」といった不確実性の大きな情報をいかに伝えるかにあった.科研費実施期間において,「まだ起きていない災害を,あたかももう起きたかのように語る」という特性をもった「防災小説」を実施したところ,大きな反響があり,ナラティヴが人々の認知に与える具体性の強さが分かった. これらを東北沿岸部にて伝えるシンポジウムを開催する予定だったが,新型コロナウイルス感染症の蔓延により断念せざるを得ない状況が続いた.そこで本年度は,成果の得られている「防災小説」を実際に演じる実動訓練を導入し,南海トラフ地震での被災が懸念されている高知空港を舞台に,多様なステークホルダーに対処行動を取ってもらう活動を行った.演者や対処者・見学者を撮影・分析し,事前と事後にヒアリングを行って,不確実性に関する認知が立場によってどのように変化するかを調査した. 主たる対象者となった空港職員は,訓練以前から高い防災意識と対処能力を持っていたが,それでも実施後は「都合のいい想定しかしていなかった」と,災害の不確実性に関する認知を改める発言が多く発せられた.さらに,半年後の追跡調査においては「訓練後は『もし今地震が起きたら』とさまざまな時間や場所で考えるようになった」と述べ,訓練時に行った想定よりも悪い状況下での発災について,いくつか想定とその対処方策を挙げるに至った.見学者や演者からは「自分ができることはサポートしたい」との意見が述べられ,実際に訓練後にさまざまなサポートが届いた. 総じて,不確実性を伴うデータそのものを地図上に示して災害に関する認知を促すよりは,それらを基礎データや基礎知識として,さまざまな立場の人が,その人の言葉で,あるいは行動で,災害時を表現する方がはるかによく他者に伝達することができ,更には,情報の受け手だった他者が今度は発信者とすらなれることがわかった.
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