最終年度は、長崎県対馬市、沖縄県与那国町、カンボジア国シェムリアップ市において、野生生物保護がどのような自治体政策として取り入れられているか等を把握するための調査を行った。一連の調査を通じて、野生生物保護が強烈に認識されている自治体、固有の種を取り上げることなくふわっとした形での保護保全を行っている自治体、野生生物保護の関心が十分に高まっていない自治体を比較することができた。比較の成果としては、中央政府もしくは自治体政府の強い関心と関与がどの程度あるかによることと、また観光が当該自治体にとって重要な位置づけをどれだけ持っているかによって、住民の野生生物保護への意識の程度が変わってくるということの示唆を得ることができた。また、対馬野生生物保護センターと協力し、交通事故被害にあう機会の多いツシマヤマネコについての意識啓発ツールとして剥製の製作を行った。 最終年度におこなった報告としては、日本環境教育学会(山梨)、野生生物と社会学会(金沢)、世界環境教育会議(バンコク)に参加し、自身の研究成果の報告および各種報告の情報収集と比較を行った。野生生物保護に関する環境教育や啓発活動がクローズアップされるとして、住民を巻き込んだ方法論としてファシリテーションを活用したワークショップ手法が活用されている実態を把握できたが、保全が必要な野生動物をめぐる環境教育については依然として萌芽的段階であるということについても併せて把握することができ、この分野の重要性を改めて強く認識することができた。
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