研究課題/領域番号 |
17K01053
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
尾山 廣 摂南大学, 理工学部, 教授 (50221700)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱帯植物 / タンパク質 / 浄水メカニズム / バイオレメディエーション / コロイド / 環境毒性 / 凝集沈殿 / 再生可能 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、基礎、応用及び発展レベルの実験教材メニューのうち、以下の項目について検討を行った。①脱脂モリンガ種子粉末の水抽出液から陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて濁水浄化タンパク質(MFP)を精製する実験フローを確立した。②部分精製MFPを変性条件下、Tricine SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分析したところ、約4 kDaと約8 kDaのサブユニットからなるヘテロ二量体であることが分かった。③モリンガ種子は、夏季の室内の窓際、自然光により1週間程度で発芽し、樹高が約50cmまで成長した。人工気象器、30℃、LED照明(660nm、520nm、445nm)でも発芽が確認された。④淀川水系の6カ所から採取した河川水は、pHが7.5~7.7、濁度(600nmの吸光度)が0.005~0.028と清澄な状態であり、汚濁水の浄化実験用のサンプルとして適さないことが分かった。⑤粘土、カオリナイト、バーミキュライトを水道水に懸濁し、人工土壌コロイド溶液(コロイド液)を調製した。粘土は土質の違いによりコロイド形成に差が生じること、0.1Mの各緩衝液(pH4.0~pH9.0)で希釈したコロイド液(濁度が0.5)は、部分精製MFPの添加による凝集・沈殿に差を生じないことが分かった。また、カオリナイトとバーミキュライトのコロイド液でも部分精製MFPの添加による凝集・沈殿が確認された。⑥食用色素(黄色4号)と水彩絵具(青色)は部分精製MFPの添加で凝集・沈殿が起こらなかった。⑦粘土、カオリナイト、バーミキュライトの低濃度コロイド液(濁度0.1以下)は、レーザー光の照射でチンダル現象が目視で観察された。⑧硫酸アルミニウム(8%)と部分精製MFP(1mg/mL)の添加によるコロイド液の凝集・沈殿は、バーミキュライトでは同程度、粘土とカオリナイトではMFPがアルミニウムよりも優れていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度の授業実践に向けて、それぞれの教育現場に合わせた実験教材メニューの完成を目標に研究を進めてきた。モリンガ種子の発芽、モデルコロイド液の調製とその浄化、コロイドの特性調査、モリンガ種子の脱脂、タンパク質の抽出と精製などの操作手順を中心に、基礎、応用及び発展レベルの教材メニューを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
モリンガ種子の発芽と初期生育過程をデジタル映像で記録し、基礎レベル用の教材ビデオに編集する。市中で購入できる素材(活性炭、燻炭、ソーダストパルプなど)の中から水溶性の色素吸着能を有するものをスクリーニングする。ワンドなどの安全な場所では実験に供する汚濁水が採取できなかったため、実験室で人工的な汚濁水(粘土+大腸菌など)を調製し、水質検査の実験系を作成する。凝集・沈殿の観察に適するコロイド溶液の濃度は高く、一方、チンダル現象などのコロイドの特性を観察できる濃度は低いことから、コロイド溶液の凝集・沈殿プロセスをMFPの添加で観察した後、同じ容器で引き続いてコロイド分子の特性を観察できる実験条件を検討する。MFPとアルミニウム凝集剤との毒性の比較やMFPの等電点沈殿による精製の操作手順を作成する。授業時間配分と各レベルの操作手順を精査し、授業実践に支障のない実験教材メニューを作成する。なお、円滑な研究推進のために、2~3月期に予算執行できるように会計システムを改善して欲しい。
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次年度使用額が生じた理由 |
夏季の実験室におけるエアコンの温度制御能力を考慮し、申請時の人工気象器を据置型から発熱量の少ない卓上型LED装置に変更した。未使用額については、平成31年度に予定する授業実践で使用するマイクロピペット、卓上遠心機、電気泳動槽、モリンガ種子などの消耗品の購入に充てる。
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