研究課題/領域番号 |
17K01055
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
洲崎 悦子 就実大学, 薬学部, 教授 (10274052)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人体に関する実習 / マクロ的実習 / 肉眼解剖実習 / ミクロ的実習 / 組織学実習 / 医療専門領域 / 薬学教員 / 高校理科教員 |
研究実績の概要 |
「人体に関する知識基盤の向上を目指した実習の提案」という研究課題を実践する初年度として、薬学部教員と高校理科教員を対象として「マクロ的実習の体験:2泊3日コース(8月11日~13日)/1日コース(8月19日)」を実施した。2泊3日コースは自ら解剖をする実習であり、全国から参集した薬学部教員8名が参加をした。1日コースは見学実習であり、薬学部教員3名と広島県の高校理科教員15名が参加をした。薬学部教員2名を除く他の全員が初めての体験であった。 参加者の多くは、実習前には精神的・体調的に不安を抱いていたが、実習が開始すると人体の実態を学ぶという真摯な姿勢で集中して取り組み、有意義な時間を過ごしていた。事後のアンケートでは参加者全員が、机上では学べない実際の臓器サイズ、質感、個人差、病態を実習することができ、今後はこの実体験を元に説得力のある講義を実施できると答えていた。 薬学部教員は、「人体の構造の実際を学ぶ」という視点を重視した実習を行っており、同時に人体に関する知識が必須である薬学生にも実習を実現できないかという観点も併せてもっていた。一方で、高校教員は、人体の実態を学習することに加えて、「生命の尊さや尊厳、個性」といった倫理的・精神的観点を重視する見方をもっていた。人体について学ぶことに関しても、領域や立場によって重視する視点は異なっていた。 制度的・倫理的に問題なく行う了解を得るための時間不足から、高校教員に自ら解剖する実習を提供することはできなかった点は不十分であったかもしれないが、通常では経験できない実習を提供することができた意義は大きかったと評価している。現状では「事後の感想」という定性的な評価のみしか得られていないが、この経験を踏まえて今後の教育がどのように変わったかという「具体的成果」を集約していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた「マクロ的実習の体験」を実現することができたので、順調な進展であると考えている。26名の参加者全員が、今回の機会が提供されなければ体験することのできなかった実習を行うことができ、机上では学べない実際の臓器のサイズ、質感、個人差、病態を実習することができて有益であったと答えていた。 「マクロ的実習の体験」を実施した成果を2つの学会で発表することができた。また、報告論文も草案としては書き上げている。論文発表が実現するよう、さらに取り組んでいく。 一方で、現状では、具体的成果をまだ把握できない時期であり、今後の参加教員の変化や向上を集約する必要がある。また、高校教員に対して見学実習は提供できたが、自ら解剖する実習は実現できなかった。制度的問題、御献体団体の周知・了解等、解決すべき問題が多く、現状では困難であった。 2年目に行う「ミクロ的実習の体験」に向けて日程の決定と、標本の準備までは行うことができている。しかし、案内についての準備が全くできていないので、新年度の5月初めには案内が開始できるように取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は「ミクロ的実習の体験」を8月18日(土)に就実大学において実施する予定である。また、これと関連して「ひらめきときめきサイエンス」に採択されたので、8月20日(月)に中高生を対象とした「よく知っている臓器を顕微鏡で見てみよう!」を実施する。まずは、2つの行事について5月初めには案内が出せるように進行させる予定である。さらに、実施のために必要な装置の購入や必要物品の取り揃えを7月初旬までには完了し、参加者にとって有意義な実習となるように十分な準備を余裕をもって行いたい。 一方で、昨年度実施した「マクロ的実習の体験」の参加者に、具体的な変化や成果について報告を集約していく。また、今年度の実習については、具体的成果につなげやすい教材提供も考えていく予定である。 その他、実施の成果を、学会発表、報告論文にまとめることも行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、次年度の「ミクロ的実習の体験」に使用する正常なヒト標本セットについて検討し発注をしたが、受注後4~5ヶ月かかるため年度内納入・請求に至らなかった(429,840円)。また、成果を発表した学会の1つが3/25-28という年度末であり、経費申請が当該年度で処理されなかった(約90000円)。そのため、約52万円の次年度使用額が生じたが、ほどなく予定通り使用される。 次年度については、「ミクロ的実習の体験」を企画・実施する。参加者に有意義な実習となるように必要物品(顕微鏡像をモニターやプロジェクターに投影して供覧するための装置等)を準備したり、必要な人員(研究協力者の旅費・宿泊費および学生アルバイト料)を配置していく。そのために必要な経費について、当初の計画通り使用していく予定である。
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